五山碩学

五山碩学制度の概要

五山碩学（ござんせきがく）は、江戸時代に京都五山の中から選ばれた学問に優れた僧侶たちに対して、手当が支給される制度です。この制度は、天龍寺、相国寺、建仁寺、東福寺の寺院に限られ、学問の振興を目的としました。支給された手当は碩学料もしくは学禄と呼ばれ、その資金源は「碩学領」として特別に区分された寺領から供給されました。

制度の成立の背景

新井白石の著作『以酊庵事議草』によると、江戸時代初期、京都五山は多くの寺領を保有していたにもかかわらず、僧侶に対する学問支援が不十分であったことが指摘され、徳川家康がこの状況を改善することを決意しました。彼は寺領の一部を承認し、学問に励む僧侶へと手当を行うことにしました。このような背景のもと、南禅寺は特に優れた学僧が多く在籍するため、特別な措置は設けられませんでした。

この制度の具体的な例として、慶長19年に僧録司の以心崇伝が京都所司代に宛てた書状に、学問を重んじる寺と無学の寺の所領を再編成する方針が示されています。その直後に作成された東福寺の知行目録には、学問を重視する“碩学領”の項目が初めて登場し、この取り組みが実施させたことが伺えます。また、家康が東福寺に宛てた朱印状にも碩学領に関する記述が確認され、制度の正式化が進んでいきました。

碩学の選出過程と役割

制度の中核をなす五山碩学の選定は厳格に行われ、最初の僧侶が決まったのは、碩学領が整備された1615年でした。初めは、東福寺が4名、他の寺は3名を定員としていましたが、実際にはその定員に満たないことも多く、相国寺では時に1名だけが碩学料を受け取ることもありました。また、五山碩学制度は「五山十刹諸山法度」と連動しており、江戸幕府の五山派を取り締まる政策の一環として成立しました。碩学となった者は京都所司代に出向き、感謝の挨拶を行うことが求められました。

さらに、寛永12年以降、五山碩学は朝鮮修文職という外交任務も担逐うようになりました。この職に就くことは将軍への感謝の挨拶を含む重要な義務の一端となり、外交業務を集中的に取り扱う立場として重視されました。特例として、高齢や病気を理由に対馬行きを逃れることもありましたが、一般的には碩学料支給とこの職務が結びついていました。

碩学任命の意義

五山碩学に選任されることで、その僧侶は生涯にわたる手当が与えられることになりました。その後、対馬に帰還した際には自らの寺院の住持に任ぜられ、更に五山の中でも名門である南禅寺の名誉住持の地位が与えられるという特典があります。しかし、南禅寺に関しては、他の寺院とは異なり、僧録による独占的一貫により名誉職を享受し続け、その地位は特別なものでした。

このように、五山碩学制度は江戸時代における学問の振興のみならず、外交にも関与しかなりの権威を持った存在でした。この制度は日本の寺院とその僧侶たちの地位を高め、学問の発展に寄与したと言えるでしょう。

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