五度圏

五度圏とは

五度圏（circle of fifths）は、音楽理論において、12の長調または短調の主音を完全五度ずつ上昇（または下降）するように配置し、環状にしたものです。この図は、調の関係性を視覚的に理解するのに役立ちます。

五度圏の成立要件

五度圏は、F♯/G♭やD♯/E♭のような異名同音の関係を利用して円環を形成しています。これは、一般的に平均律を前提としています。純正な完全五度に基づくピタゴラス音律では、異名同音を利用して閉じた環を作ることはできません。

例えば、E♭を起点として完全五度を12回上方向に重ねると、異名同音関係にあるD♯が得られます（E♭ - B♭ - F - C - G - D - A - E - B - F♯ - C♯ - G♯ - D♯）。しかし、純正な完全五度（周波数比3:2）の場合、このD♯とE♭は正確なユニゾンやオクターブ関係にならず、ピタゴラスコンマ（約23.46セント）の差が生じます。

平均律では、完全五度が純正音程よりも1/12ピタゴラスコンマだけ狭められているため、D♯とE♭が一致し、閉じた五度圏を形成できます。

五度圏の利用

五度圏は、ある調から他の調への「遠隔度」を視覚化するのに用いられます。例えば、ト長調に対して五度圏上で隣接する5つの調（ホ短調、ニ長調、ロ短調、ハ長調、イ短調）は、和声的に近い関係にある近親調です。一方、五度圏上で最も離れた嬰ハ長調とは、和声的に遠い関係にあり、その音階上の三和音に共通するものが1つもありません。

五度圏を理解することで、作曲や編曲における調の選択、転調の計画、和声分析などがよりスムーズに行えるようになります。

参考文献

小方厚 (2012年3月13日). “ドレミの科学” (PDF). 平成23年度TSS文化大学講演―学問の散歩道シリーズ2―. 広島大学マスターズ.
小方厚 (2016年1月19日). “ネットで「視て聴くドレミ」:ピタゴラス音律と五度円” (PDF). 2015年度TSS文化大学講演. 広島大学マスターズ.

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