異名同音

異名同音（いめいどうおん）について

異名同音とは、音楽の分野、特に平均律において用いられる概念で、音の名前（音名）は異なるものの、実際に耳で聴く音の高さが同じになる複数の音のことを指します。これは、エンハーモニック（英語ではenharmonic、フランス語ではenharmonique）とも呼ばれます。

平均律と異名同音

西洋音楽で広く用いられている十二平均律では、1オクターブを12の等しい半音に分割します。このシステムにおいて、特定の音は複数の異なる名前で表されることがあり、これらが異名同音の関係にある音です。

具体的には、以下の12の組み合わせが存在します。

• - □Cと■B#
• - ■C#と□Db
• - □Dと■C##
• - ■D#と□Eb
• - □Eと■Fb
• - □Fと■E#
• - ■F#と□Gb
• - □Gと■F##
• - ■G#と□Ab
• - □Aと■G##
• - ■A#と□Bb
• - □Bと■Cb

上記のリストで、□はピアノの白鍵、■は黒鍵に対応します。

これらの組み合わせは、楽譜上では異なる音符として表記されますが、実際に演奏される音は同じ高さになります。例えば、C#（嬰ハ）とD♭（変ニ）は、楽譜上は異なる音として扱われますが、ピアノなどの楽器では同じ鍵盤を叩くことで同じ音が出ます。

調としての異名同音

音楽理論においては、「調」という概念も重要です。調とは、ある楽曲がどの音を基準に構成されているかを示すものです。異名同音の関係は、調にも影響を与えます。特に、調号（シャープやフラット）が5つ以上になるような調においては、異名同音の関係にある調が複数存在します。これらの調は異名同音調と呼ばれます。

具体的には、以下の6組が異名同音調の関係にあります。

1. ロ長調（B major）と変ハ長調（C♭ major）
2. 嬰ト長調（G# major）と変イ長調（A♭ major）
3. 嬰ニ長調（D# major）と変ホ長調（E♭ major）
4. 変イ短調（A♭ minor）と嬰ト短調（G# minor）
5. 変ホ短調（E♭ minor）と嬰ニ短調（D# minor）
6. 変ロ短調（B♭ minor）と嬰イ短調（A# minor）

これらの調は、理論上は異なる調として扱われますが、実際には同じ音の並びを持つため、演奏する際には実質的に同じ調として扱われることがあります。

異名同音の意義

異名同音は、音楽の記譜法と実際の音との間に存在する柔軟性を示すものです。作曲家は、楽曲の構成や調性に応じて、異名同音の音を使い分けることで、より音楽的な表現を追求することができます。また、異名同音の概念を理解することは、音楽理論を学ぶ上で不可欠であり、より深い音楽理解につながります。

関連事項

• - 平均律
• - 鍵盤楽器
• - ジャン＝フィリップ・ラモー

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