五條流

五條流

五條流は、花柳珠實（初代）が1940年12月16日に創設した日本舞踊の流派です。六代目尾上菊五郎より「五條」の名を許され、二代目花柳壽輔の了承を得て創流されました。

特徴

五條流は、古典舞踊の伝統を重んじながらも、洋楽やバレエの要素を取り入れた革新的な舞踊を創作しました。その斬新な試みは、新舞踊運動の先駆けとして評価されています。1955年からは、珠實を中心に舞踊団を結成し、ヨーロッパ公演を成功させました。ウィーン国立歌劇場での国際芸術祭参加をはじめ、ドイツ、ルクセンブルク、オーストリア、スイスを歴訪し、終戦間もない日本の文化を世界に広める役割を果たしました。

流派名の由来

流派名の「五條」は、初代尾上菊五郎が京都五条で舞踊の流儀を作ったという伝承に由来します。六代目尾上菊五郎が、その名跡を花柳珠實に新流派名として授けました。

主な人物

初代家元：五條珠實 (1899-1987)

五代目尾上菊五郎門下の尾上尾乃志と、狂言作家の尾上幸右衛門の養女として育ちました。六代目尾上菊五郎に師事し尾上かなめ、初代花柳徳太郎に師事し花柳徳次と名乗りました。後に花柳珠實と改名し、五條流を創流。『惜しむ春』や『春信幻想曲』などの作品で新舞踊の旗手として注目され、『太鼓のリズム』など、民俗芸能をいち早く取り入れた作品も発表しました。芸術選奨、紫綬褒章、勲四等宝冠章を受章。

二世宗家：五條珠実 (1912-2001)

花柳流時代に珠實の内弟子となり、後に五條珠緒と名乗りました。五條流創流期には側近として流儀の発展に貢献。長年にわたり、一門の会や自身のリサイタルを開催し、各賞を受賞。米寿を迎えての『北州』や、卒寿を過ぎてから三代目家元となる雅之助と共演した『連獅子』が話題となりました。

二代目家元：五條詠昇 (1923-2008)

幼少より珠實に師事し、五條珠太と名乗りました。後に雅巳と改名し、創作舞踊による公演を多数開催、芸術祭賞を相次いで受賞。初代による渡欧公演以降も、親善大使として40カ国以上で日本舞踊および日本民族舞踊公演に参加。民族芸能文化連盟理事、日本民俗芸能協会常任理事、同会長などを歴任。1990年より五條流家元五條詠昇となりました。紫綬褒章、勲四等旭日小綬章を受章。

三代目家元：五條珠實 (1952-)

舞踊を詠昇に、長唄三味線を杵屋勝芳寿に師事し、それぞれ五條雅之助、杵屋勝寿央を名乗りました。国立音楽大学、武蔵野音楽大学大学院卒業後、武智鉄二の歌舞伎塾、花柳芳次郎（二世花柳壽應）の舞踊塾に学びました。日本舞踊協会公演、創作舞踊劇場、五條流珠實会などに出演。自身の舞踊会「雅之助の會」、門下の「紅雅会」を主宰し、国立劇場などで古典から創作まで幅広い作品を発表しています。海外公演も数多く、ロンドン、ベルリン、パリ、ウィーン、ローマ、ニューヨークなど各地で公演、ワークショップを行っています。2008年より五條流家元五條珠實となりました。現在は東京藝術大学客員教授、日本舞踊協会会員。コロナ禍においては公演延期や稽古中止を余儀なくされましたが、シャンソンのライブ活動も行っています。

参考文献

仁村美津夫著『おどり明暗帖』邦楽と舞踊出版部　1967年3月5日発行
大中博編『五條流史　珠實舞踊七十年』舞踊界社出版部　1976年6月5日発行
藤田洋著『日本舞踊入門』文研出版　1976年9月20日発行
郡司正勝編『日本舞踊名曲辞典』小学館　1976年12月10日発行
郡司正勝編『日本舞踊辞典』東京堂出版　1977年7月5日発行
西形節子著『日本舞踊の世界』講談社　1988年3月25日発行
『五條流創流六十周年記念　第六十九回珠実会』劇場パンフレット、2001年9月22日開催
『五條流創流七十周年記念　第七十四回珠実会』劇場パンフレット、2010年9月12日開催
西形節子著『日本舞踊八十年』南窓社　2015年6月26日発行

外部リンク

五條珠實（三代目家元）
* 五條園美

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