五色塚古墳

五色塚古墳と小壺古墳：明石海峡を見下ろす古代の巨墳

神戸市垂水区五色山に広がる五色塚古墳は、兵庫県最大規模を誇る前方後円墳です。明石海峡と淡路島を望む絶好の場所に位置し、その壮大なスケールは、古代の豪族の力と威信を物語っています。4世紀末から5世紀初頭、古墳時代中期に築造されたと推定されており、その歴史的・考古学的価値から国の史跡に指定されています。さらに、出土した数々の遺物は国の重要文化財、神戸市指定有形文化財にも指定されており、その重要性が広く認められています。

本稿では、五色塚古墳と、その西隣に位置する小壺古墳について詳細に解説します。小壺古墳も五色塚古墳とともに国の史跡に指定されており、両古墳は一体として古代の歴史を今に伝えています。

五色塚古墳：巨大な墳丘と精緻な造形

五色塚古墳は、前方部を南向きにした前方後円墳で、全長194メートルに及ぶ巨大な墳丘を有しています。これは兵庫県内では最大規模、全国でも上位にランクインする規模です。墳丘は3段に築成され、各段には円筒埴輪が整然と並べられ、斜面には葺石が丁寧に敷き詰められています。推定される埴輪数は2200本、葺石は約223万個にも及び、その規模の大きさと精緻な造形技術の高さが際立っています。特に、上段と中段に使用された葺石は淡路島産であることが判明しており、当時における広範囲な交易や政治的影響力の強さを示唆しています。

墳丘周囲には二重の周濠がめぐらされ、濠内には方形の島状遺構（マウンド）が3か所確認されています。これらの遺構の用途は明確ではありませんが、祭祀空間や陪塚としての可能性が考えられています。埋葬施設については未解明ですが、竪穴式石室が使用されていたと推定されています。

被葬者については特定されていませんが、明石海峡とその周辺地域を支配した有力な豪族の首長であったと考えられています。淡路島から大量の石材が運ばれたという事実は、『日本書紀』の神功皇后紀の記事と関連付けられ、被葬者の勢力範囲が淡路島にまで及んだ可能性を示唆しています。また、ヤマト王権の大王墓に匹敵する規模であることや、その地理的条件から、ヤマト王権の強い関与が推測されています。

小壺古墳：円墳の優美さと五色塚との関係

小壺古墳は、五色塚古墳の西側に位置する円墳です。直径約70メートル、高さ約8.5メートルで、兵庫県内では2番目の規模を誇ります。墳丘は2段に築成され、各段には埴輪が配置されていましたが、五色塚古墳とは異なり葺石は確認されていません。周囲には周濠があり、墳丘北側には通路状遺構（土橋）も認められます。出土品には円筒埴輪や朝顔形埴輪、形象埴輪などがあり、五色塚古墳と同時期に築造されたと推定されています。

小壺古墳という名称は、五色塚古墳の別名「千壺」との対比から付けられたと考えられています。五色塚古墳と小壺古墳の築造年代や関係性については、今後の研究が待たれます。

豊富な出土品と歴史的伝承

五色塚古墳からは、多数の円筒埴輪や形象埴輪、土器などが発掘されています。特に、円筒埴輪群は600本以上が採集され、そのうち48点は国の重要文化財に指定されています。これらの出土品は、当時の生活や信仰、技術レベルを知る上で貴重な資料です。

五色塚古墳には、『日本書紀』の神功皇后紀に記述されている伝承が関連付けられています。神功皇后が仲哀天皇の陵を造営したという記事は、古くから五色塚古墳との関連性が指摘されています。

現地へのアクセスと関連施設

五色塚古墳と小壺古墳は、公共交通機関や自家用車を利用してアクセスできます。無料駐車場も完備されています。近くには神戸市埋蔵文化財センターがあり、五色塚古墳の出土品などが展示されています。

これらの古墳は、古代日本の歴史や文化を理解する上で貴重な存在です。ぜひ、現地を訪れてその壮大さと歴史を感じてみてください。

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