五郎兵衛用水

五郎兵衛用水（ごろべえようすい）

五郎兵衛用水は、長野県佐久市（旧五郎兵衛新田村）を流れる用水路で、江戸時代初期に市川五郎兵衛真親（いちかわ ごろべえ さねちか）によって開削されました。

歴史

五郎兵衛用水は、元亀2年（1571年）頃に生まれた市川五郎兵衛真親が、新田開発の一環として着手し、寛永8年（1631年）頃に完成しました。水源は蓼科山の豊かな湧水を利用しており、農業用水として重要な役割を果たしてきました。その歴史的価値から、疏水百選やかんがい施設遺産にも選ばれています。

逸話

五郎兵衛用水には、いくつかの興味深い逸話が残されています。

神楽の音色と安全祈願：用水路のトンネル工事中、作業員たちは美しい神楽の音色を耳にしました。作業員が坑外へ出た直後、トンネル内部が崩壊しましたが、神楽のおかげで難を逃れたとされています。このことから、五郎兵衛は工事着工前に伊勢神宮へ安全祈願の使いを出し、その後も毎年代参を続けたと伝えられています。
真綿と漏水発見：上原地区では、水路の漏水が問題となっていました。五郎兵衛は伊勢の神に真綿を奉納し、その残りを水路に流してみたところ、漏水箇所を発見し修理することができました。この出来事から、水路の起点は「大神口」、付近の田は「大神面」と名付けられ、この田の収穫を祭典費用に充てることになりました。
千両箱の秘密：用水工事中、五郎兵衛は資金調達に苦労しました。人夫を集めるために千両箱を馬に乗せて運ばせましたが、その中身は貨幣ではなく石でした。この逸話は、五郎兵衛の知恵と工夫を物語っています。
ナンジャモンジャの木：矢島地区を流れる水路のそばにあるナンジャモンジャの木（和名：ハリモミ、俗称：ヤニダレ）は、五郎兵衛が実家から移植したものと伝えられています。
化け石の伝説：五郎兵衛邸の池の傍らには「化け石」と呼ばれる石があり、池の主だとされていました。五郎兵衛を快く思わない小諸藩士が、邸宅に押しかけて化け石に座り五郎兵衛を詰問しましたが、五郎兵衛が徳川家康の朱印状を見せたことで、彼らは面目を失ったとされています。
一夜土手：八幡地区には、「一夜土手」という土手がありました。これは、新田開発が八幡村まで及ぶのを防ぐために、村人たちが一夜のうちに築いたものとされています。

これらの逸話は、五郎兵衛用水が地域の人々にとって、単なる農業用水路以上の存在であったことを物語っています。

現在

五郎兵衛用水は、現在も農業用水として利用され、地域の農業を支えています。また、その歴史的価値から、多くの人々が訪れる観光スポットにもなっています。

参考文献

佐久教育会歴史委員会編 『限定復刻版 佐久口碑伝説集 北佐久篇』佐久教育会、1978年
信州農村開発史研究所編 『水と村の証言 五郎兵衛新田物語』 1980年

関連項目

灌漑

外部リンク

農林水産省 疏水名鑑 五郎兵衛用水
長野県 五郎兵衛用水
佐久市 五郎兵衛記念館
* 五郎兵衛用水水土里ネット 歴史伝承マイスター

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