井上俊

井上俊(いのうえ しゅん、1938年9月8日-)は、日本の社会学界において重要な役割を果たした著名な学者です。文化社会学、社会心理学、社会学を専門とし、大阪大学名誉教授の称号も持つ彼の業績は多岐に渡ります。宮城県仙台市に生まれた井上氏は、東北大学附属小学校、中学校、仙台第二高等学校を経て、1958年に京都大学文学部に入学。1963年に同大学を卒業後、大学院に進学し、1967年には博士課程を中退しています。

その後、京都大学文学部助手、神戸商科大学商経学部専任講師、大阪大学教養部助教授、教授を経て、1984年には大阪大学人間科学部教授に就任しました。1996年には京都大学大学院文学研究科教授に転じ、2002年に京都大学を退職、甲南女子大学人間科学部教授に就任しています。

井上氏の学問的関心の広さは、彼の多様な研究活動から明らかです。単著としては、『死にがいの喪失』『遊びの社会学』『悪夢の選択　文明の社会学』『スポーツと芸術の社会学』『武道の誕生』など、社会の様々な側面を鋭く切り取った多くの著作を発表しています。これらの著作は、社会学の枠を超え、幅広い読者層に影響を与えました。

さらに、共編著においてもその活躍は顕著です。仲村祥一氏との共編著『うその社会心理　人間文化に根ざすもの』、作田啓一氏との共編著『命題コレクション社会学』、大村英昭氏との編著『社会学入門』など、多くの共著を発表し、日本の社会学の発展に貢献しています。翻訳活動にも精力的に取り組み、J.B.メーズの『われらみな犯罪者か　犯罪と社会構造』、D.W.プラースの『日本人の生き方　現代における成熟のドラマ』、ランドル・コリンズの『脱常識の社会学　社会の読み方入門』などを日本語に翻訳しています。これらの翻訳は、日本の社会学研究に外国の知見を取り入れる上で重要な役割を果たしました。

学術活動に加え、井上氏は日本の社会学界を牽引するリーダーとしての役割も担いました。日本社会学会会長を務めるなど、組織運営にも尽力しました。また、1977年には城戸浩太郎賞を受賞、2018年には瑞宝中綬章を受章するなど、その功績は高く評価されています。

1976年には、桑原武夫、鶴見俊輔、多田道太郎、津金沢聡広らと現代風俗研究会を創設（桑原武夫が初代会長）するなど、学界への貢献は多岐に渡ります。

井上俊氏の研究活動は、単に学問的な探求にとどまらず、現代社会の諸問題への深い洞察と、社会への貢献という強い意志が感じられます。彼の著作は、現代社会を理解する上で貴重な示唆に富んでおり、これからも社会学研究者のみならず、広く一般読者にとっても重要な参考文献であり続けるでしょう。その学問的業績と社会への貢献は、後世に長く記憶されるに違いありません。

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