井上和雄 (浮世絵研究者)

井上和雄は、1889年（明治22年）6月19日に鹿児島県で生まれ、1946年（昭和21年）6月20日に生涯を閉じた日本の浮世絵研究者です。彼の研究活動は、浮世絵という芸術分野において重要な役割を果たしました。

生い立ちと初期の活動

井上和雄は、1900年（明治33年）から1911年（明治44年）まで古書店である山田聖華房に勤務しました。この経験は、彼が古書や歴史的な資料に触れる機会を与え、後の研究活動の基盤を形成する上で重要な役割を果たしたと考えられます。その後、1911年には宮武外骨が主宰する大阪雅俗文庫で編集委員を務め、出版物の編集にも携わりました。1913年（大正2年）から1914年（大正3年）にかけては京都府立図書館にて出納係および監視員として勤務し、図書館運営の一端を担いました。これらの職務経験は、資料整理や管理の知識を深める上で役立ったでしょう。

浮世絵研究への傾倒

1916年（大正5年）から1918年（大正7年）にかけて、井上は酒井好古堂で雑誌『浮世絵』の編集委員を務めました。この時期から、彼の活動は浮世絵研究に本格的に傾倒していくことになります。1921年（大正10年）には日本浮世絵協会の理事に就任し、機関誌『浮世絵之研究』の編集および発行人を1926年（大正15年）まで務めました。この活動を通して、井上は浮世絵研究の第一線で活躍しました。さらに1928年（昭和3年）には、福永書店で雑誌『浮世絵』の編集兼発行人、また『浮世絵新聞』の編集も担当しました。これらの編集活動を通して、浮世絵に関する知識の普及に大きく貢献しました。

幅広い研究活動

井上和雄の研究活動は、浮世絵だけに留まりませんでした。1924年（大正13年）には、吉野作造らが設立した明治文化研究会に参加し、会誌『新旧時代』の編集発行兼印刷者、その後編集同人として活動しました。これにより、彼は明治期の文化研究にも関与し、幅広い知識と見識を深めました。1929年（昭和4年）には、芸艸堂から創刊された『浮世絵志』の編集同人に加わり、1932年（昭和7年）には『浮世絵譚界』の編集兼発行人を務めるなど、精力的な活動を展開しました。

著書と研究成果

井上和雄は、多くの著書や編著を世に残しました。主な著書としては、『宝船考』（1936年）、『書物三見』（1939年）、『写楽』（1940年）などがあります。また、編著としては、『慶長以来書賈集覧』（1916年）や『宝舟集』シリーズ、『浮世絵師伝』（1931年）、『浮世絵標準画集』シリーズなどがあります。これらの出版物は、彼の研究成果を広く社会に伝える上で重要な役割を果たしました。これらの著書は、現在でも研究者や愛好家にとって貴重な資料となっています。

まとめ

井上和雄は、浮世絵研究者としての生涯を通じて、多くの研究成果を残しました。彼の活動は、今日の浮世絵研究の発展に大きく貢献しています。彼の業績は、今もなお多くの研究者や愛好家によって参照され、その功績は高く評価され続けています。

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