井上操

井上操は、弘化4年9月20日（1847年10月28日）に信濃国松代（現在の長野県長野市）で、松代藩士・井上五郎左衛門の子として生を受けました。幼少期から学問に励み、藩の兵制士官学校では武田斐三郎に師事し、その才能を開花させました。

その後、井上は司法の道に進むことを決意し、司法省法学校に入学。在学中には、後の元老となる山縣有朋の知遇を得て、その後のキャリアに大きな影響を与えました。1876年に法学校を卒業した井上は、法律家としての第一歩を踏み出します。

1882年からは、明治法律学校（現在の明治大学）で治罪法（刑事訴訟法）の教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。その優れた知識と教育能力は高く評価され、1886年には東京帝国大学（現在の東京大学）教授に迎えられます。しかし、井上は教育者としての道だけでなく、司法官としてもその手腕を発揮することを選び、判事に転身しました。

判事としての井上は、大阪控訴院評定官として活躍し、その後、大井憲太郎らによる大阪事件の裁判においては、大阪重罪裁判所裁判長として重要な役割を果たしました。この事件は当時の社会に大きな影響を与え、その裁判を公正かつ的確に遂行した井上の功績は大きく評価されました。また、関西法律学校（現在の関西大学）が開校すると、刑法などの講義を担当し、教育者としての情熱も持ち続けていました。

1890年には大阪控訴院部長に昇進し、その司法官としてのキャリアは頂点を迎えましたが、1895年に病に倒れ、故郷の松代に帰郷。療養生活を送ることとなりました。その後、1905年2月23日、松代の地で生涯を閉じました。

井上操は、法律家としてだけでなく、教育者としてもその才能を発揮し、多くの後進を育てました。彼の法律に対する深い知識と情熱は、その著作にも表れています。『日本治罪法講義』は、当時の刑事訴訟法を学ぶ上で重要な文献として広く読まれました。また、『大日本憲法述義』や『商法述義』など、幅広い分野の法律に関する著作を残し、その学識の高さを示しました。

さらに、井上は語学にも長けており、『外国語筆記帳』からは、彼の学問に対する探求心と、グローバルな視点を持っていたことが伺えます。

井上操の功績は、明治期の日本の法制度の発展に大きく貢献しただけでなく、教育者として多くの人材を育成した点にもあります。その生涯は、日本の近代化を支えた先駆者の一人として、後世に語り継がれるべきものです。


主な著書
『日本治罪法講義』（明治19年、知新社）
上巻NDLJP:795475
中巻NDLJP:795476
下巻NDLJP:795477
『大日本憲法述義』
『商法述義』
* 『外国語筆記帳』

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