大井憲太郎

大井憲太郎：激動の時代を駆け抜けた自由民権運動の闘士

大井憲太郎（おおい けんたろう）は、天保14年（1843年）に豊前国（現在の大分県）に生まれ、大正11年（1922年）に没した、日本の政治家、弁護士、そして社会運動家です。旧姓は高並、別名として馬場城二郎、馬城山人とも称しました。

生い立ちと初期の活動

農民の子として生まれた大井は、幼少より漢学を学びました。その後、長崎で蘭学や英学を修め、大井卜新と出会い、その養子となります。さらに江戸で仏学や化学を学び、幕府の開成所にも出仕しました。戊辰戦争では幕府軍に加わり、官軍と戦いましたが、この頃に正教会の洗礼を受け、熱心な正教徒となりました。

明治維新後の活動

明治維新後、大井は箕作麟祥に学び、大学南校（現在の東京大学）に入学します。明治7年（1874年）には、民撰議院設立を巡り加藤弘之と論争を繰り広げました。一時的に官界に入り、元老院の少書記官となりますが、すぐに辞任し、愛国社の創立に参加しました。その後は弁護士として活動しながら、自由民権運動の指導者として頭角を現します。

自由民権運動と大阪事件

大井は自由民権運動の急進派として活躍し、明治14年（1881年）には、仏教団体からの誣告によって死体が発掘された正教徒のために弁護活動を行い、大審院で勝訴しました。明治15年（1882年）には自由党に参加し、明治17年（1884年）には秩父困民党を指導しました。明治18年（1885年）には、朝鮮の内政改革を企図した大阪事件を起こし逮捕され、禁固9年の判決を受けます。

出獄後の活動と晩年

明治22年（1889年）に大赦で出獄した後、大井は中江兆民らと共に、旧自由党勢力の糾合を目指し、明治23年（1890年）に立憲自由党を結成しました。この頃、清水紫琴や福田英子と交際し、それぞれに子供をもうけています。明治25年（1892年）には党を離れ、東洋自由党を結成しました。大井は普通選挙を主張し、日本労働協会や小作条例調査会を設立し、社会運動の先駆けとなりました。

明治26年（1893年）に東洋自由党を解党した後、翌年には衆議院議員に当選します。また、梅屋庄吉から南洋貿易と移民の計画を持ちかけられ、シンガポールを視察し、南洋貿易商会を設立しました。さらに、自由党と進歩党の合同による憲政党の結成にも尽力しました。晩年は、普通選挙運動に取り組み、南満州鉄道とも関係を持ち、対外強硬論を主張しました。

大正11年（1922年）に亡くなった大井の葬儀はニコライ堂で行われ、墓所は雑司ヶ谷霊園にあります。

著書

大井憲太郎は、『時事要論』や『自由略論』などの著書を遺しています。

まとめ

大井憲太郎は、激動の時代を生き抜き、自由民権運動、社会運動、そして政治の世界で多大な影響を与えた人物です。その生涯は、日本の近代化と民主主義の発展に大きく貢献しました。

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