大阪事件

大阪事件とは

1885年（明治18年）に大阪で発生した、自由民権運動の激化事件の一つです。この事件は、自由党左派の活動家たちが、朝鮮の内政改革を目指してクーデターを計画したものの、事前に発覚し失敗に終わった事件です。

事件の背景

1882年の壬午軍乱をきっかけに、朝鮮半島を巡る情勢が複雑化していました。自由党の幹部たちは、朝鮮の独立党を支援する姿勢を示し、後藤象二郎らはフランス公使に資金援助を求め、朝鮮での宮廷改革を試みていました。しかし、政府はこれに先手を打ち、独立党によるクーデターを支援しますが、清の介入により失敗に終わります（甲申政変）。

事件の概要

自由党左派の大井憲太郎らは、党の方針とは異なり、朝鮮人民の独立運動と日本の自由民権運動を結びつけ、両国にまたがる民主主義革命を目指しました。大井を中心に、景山英子、小林樟雄、磯山清兵衛、新井章吾、稲垣示ら旧自由党の一部は同志を率いて朝鮮に渡り、クーデターを起こして事大党政権を倒し、独立党政権を樹立しようと計画しました。彼らは甲申政変で失敗した金玉均らを支援し、朝鮮に立憲体制を築いて清からの独立を目指していました。国内の自由民権運動が行き詰まる中、海外への進出で国威を発揚し、国内改革も目指そうとしたのです。

彼らは爆弾を製造したり、資金集めのために強盗行為も行いましたが、磯山の裏切りにより計画が事前に発覚。139人が逮捕されました。小林と磯山は外患罪で禁固6年、大井と新井は重懲役9年の判決を受けました。1887年、大阪の壽法寺で事件関係者の慰霊祭が行われ、1889年には大日本帝国憲法発布の恩赦により大井らは釈放されました。

事件の影響

福田英子（旧姓：景山）の著書『妾の半生涯』には、当時の収監状況が描かれています。後に社会主義者となった英子は、この事件を振り返り、自身が国権主義的であったと批判しています。また、稲垣示は入獄中に詠んだ短歌300首を『狭衣集』として刊行しています。

当時自由民権運動に参加していた北村透谷は、資金調達のための強盗行為に誘われたことに苦悩し、運動から離脱しました。しかし、後に発表した長詩「楚囚之詩」には、この事件の影響が見られると言われています。

参考文献

後藤靖「大阪事件」『日本歴史大辞典 第2巻』河出書房新社、1974年11月。
佐々木克『日本近代の出発』集英社〈集英社版日本の歴史17〉、1992年11月。ISBN 4-08-195017-2。

関連項目

自由民権運動
甲申事変

外部リンク

* 壽法寺大阪事件慰霊碑

大阪事件は、明治期の自由民権運動における過激化の一例として、その後の社会運動や文学に影響を与えた重要な事件です。

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