武田斐三郎

武田斐三郎：多才な才能で近代日本を築いた先駆者

武田斐三郎（たけだ あやさぶろう）は、文政10年（1827年）に伊予大洲藩（現在の愛媛県大洲市）で生まれました。幼名は斐三郎、後に成章（しげあきら）と改名。号を竹塘（ちくとう）と称しました。武田家は甲斐武田氏の流れを汲み、大洲藩に仕えた家柄です。

若き日の修学

斐三郎は、大洲藩校・明倫堂で学び、その後、大坂の緒方洪庵の適塾に入門。ここで蘭学を修め、塾頭も務めました。さらに、伊東玄朴や佐久間象山に師事し、兵学や砲術も学びました。ペリー来航の際には、象山と共に浦賀へ赴き、黒船を見聞。その様子を『三浦見聞記』として著しました。この頃から、彼の才能は周囲に認められるようになります。

幕府での活躍

幕府は斐三郎の才能を高く評価し、旗本格として出仕させました。長崎では、ロシアのプチャーチンとの交渉に通詞として参加。その後、箱館奉行所の蝦夷地・樺太巡察に随行し、ペリーとの会談にも同席しました。箱館では10年間滞在し、機械・弾薬製造の責任者として活躍。弁天台場や五稜郭の設計・建設を主導しました。また、諸術調所では教授を務め、榎本武揚、前島密、井上勝らを育てました。さらに、溶鉱炉の建設や、国産帆船「亀田丸」での日本一周航海、ロシアへの貿易など、多岐にわたる活動を行いました。

戊辰戦争と明治維新

戊辰戦争が勃発すると、兄が討幕派であったため、斐三郎は疑われ、自宅を襲撃されました。その後、恩師である佐久間象山の故郷、松代藩に匿われ、藩の兵制士官学校で教鞭を執りました。明治維新後、新政府に出仕。日本軍の近代兵制、装備、運用を指導し、陸軍士官学校の創設に尽力しました。

その後の功績と晩年

斐三郎は、フランス軍事顧問団との厳しい交渉を経て、明治8年（1875年）に陸軍士官学校を開校。初代校長を務めました。しかし、激務が祟り、明治13年（1880年）に病没。享年53歳でした。墓所は荒川区泊船軒にあり、東京芝東照宮には顕彰碑が建てられています。

多岐にわたる才能と逸話

斐三郎は、幼少の頃から才能を発揮していました。12歳で小舟を自作して川に浮かべ、周囲を驚かせたという逸話も残っています。また、日本初のストーブを考案したり、火薬の原料となる硝石採取法を発明するなど、技術者としての才能も発揮しました。箱館で会見したペリーは、斐三郎の人物と学識を高く評価しました。勝海舟も、その死を惜しみ、「わが国科学技術の先駆者として万能の逸材であった」と述べています。

武田斐三郎は、幕末から明治にかけて、日本の近代化に多大な貢献をした人物です。その多岐にわたる才能と業績は、現代においても高く評価されています。

補足

三度の結婚歴があり、箱館で商家の娘と結婚しましたが死別。その後、二度再婚しましたが、いずれも死別しています。三度目の結婚で西村仲子と結婚しました。
五稜郭にある彼の彫像は、人々に撫でられ、頭が良くなるとの噂から光っています。
幕臣時代にナポレオン砲の国産化に成功しました。
新島襄が会いに函館に行った際、斐三郎は江戸に発った後で、行き違いになりました。

参考文献

外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
小川恭一編『寛政譜以降旗本家百科事典』1997-1998年
白山友正（函館大学教授、文学博士）「武田斐三郎伝」昭和46年
箕作阮甫「西征紀行」（大日本古文書、幕末外国関係文書）
武田英一・水野行敏「竹塘先生伝」明治33年
「函館市史・ｐ663・諸術調所など」（ホームページあり）
* 大松騏一 『関口大砲製造所』 東京文献センター 2005年 ISBN 978-4925187466

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