井上次郎 (実業家)

井上次郎：イオンの礎を築いた実業家

井上次郎（1928年4月6日-1969年4月29日）は、日本のスーパーマーケット業界に大きな足跡を残した実業家です。現在のイオンの源流の一つである株式会社シロの創業者として、その名は広く知られています。大阪府豊中市に生まれ、関西大学経済学部卒業後、実兄と共に飯田株式会社を創業。当初は衣料品の販売や染色、機械販売、アパート経営を手掛けていましたが、1955年、妻である米子と共に婦人服仕立業を開始。これがシロの始まりでした。

シロの設立と成長

アパートの一室を改装した小さな店舗から出発したシロは、着実に成長を遂げます。1961年にはアパートを鉄筋コンクリート4階建てに建て替え、シロ1号店をオープン。さらに、本部一括仕入れ方式を採用するなど、経営の効率化にも積極的に取り組みました。1963年には、本社を豊中市から吹田市に移転。大阪府を中心に店舗数を拡大し、中堅スーパーマーケットとして確固たる地位を築きました。しかし、1960年代半ばには、急成長を続けるダイエーとの競争が激化し、井上は危機感を募らせていました。

ジャスコ設立と急逝

経営環境の激変の中、井上は新たな戦略を模索します。1968年、三重県の岡田屋、兵庫県のフタギとの合併を視野に入れた共同仕入れ会社として、ジャスコ（初代）を設立。この新会社設立には、激しい競争を生き残るための戦略的判断が読み取れます。井上はジャスコ副社長に就任しますが、経営統合が進む最中の1969年4月29日、心筋梗塞のため急逝。享年41歳でした。

シロのその後とイオンへの統合

創業者の急逝はシロに大きな衝撃を与えました。負債を抱えていたシロは「京阪ジャスコ」に社名変更し、フランチャイズとして再建を目指します。その後、岡田屋やフタギの合併を経て、1972年には現在のイオンへとつながるジャスコ（2代目）と合併しました。シロ1号店があった豊中市庄内地区には、2022年にイオンタウン豊中庄内がオープン。約50年ぶりに、イオンが創業の地へと回帰したのです。

井上次郎の功績

井上次郎の生涯は、困難と挑戦に満ち溢れていました。小さな仕立屋から出発し、中堅スーパーマーケットへと成長させた彼の経営手腕は、高く評価されています。彼の功績は、今日のイオングループの礎を築いたこと、そして、日本のスーパーマーケット業界の発展に大きく貢献したことにあります。彼の急逝は大きな損失でしたが、彼が築き上げた企業は、現在も日本の流通業界をリードしています。井上次郎の物語は、企業家精神と時代の変遷、そして日本の経済発展を象徴する一つの歴史として、未来へと語り継がれていくでしょう。

参考文献

* 日外アソシエーツ 編『日本の創業者―近現代起業家人名事典』（2010年）ISBN 978-4-8169-2239-8

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