井上浩一 (歴史学者)

井上浩一氏は、1947年9月24日生まれの日本の歴史学者で、ビザンツ（東ローマ）帝国史を専門としています。大阪市立大学の名誉教授であり、現在は佛教大学歴史学部で特別任用教授を務めています。

京都市で生まれた井上氏は、1971年に京都大学文学部を卒業後、1976年に同大学院文学研究科博士課程を単位取得退学しました。その後、大阪市立大学文学部で講師、助教授、教授を歴任し、文学研究科（西洋史学専修）の教授としても教鞭をとりました。2011年に定年退職し、名誉教授となりました。また、日本ビザンツ学会の代表も務めるなど、学会活動にも積極的に貢献しました。現在は退任していますが、「関西ビザンツ史研究会」を主催し、研究の発展に尽力しています。

2012年4月には、インターネット上で西洋史を講義する「バーチャル大学」の「学長」として、西洋史の研究方法やレポートの書き方などを公開しました。これは、西洋史研究の裾野を広げ、より多くの人々が歴史に触れる機会を提供することを目的としています。2013年からは佛教大学歴史学部の特別任用教授に就任し、2020年度に定年退任しました。

井上氏の主な著作には、『ビザンツ帝国』(岩波書店, 1982年)、『生き残った帝国 ビザンティン』(講談社, 1990年/講談社学術文庫, 2008年)、『ビザンツ皇妃列伝 憧れの都に咲いた花』(筑摩書房, 1996年/白水社, 2009年)、『ビザンツ 文明の継承と変容』(京都大学学術出版会, 2009年)、『私もできる西洋史研究 - 仮想（バーチャル）大学に学ぶ』(和泉書院, 2012年)、『歴史学の慰め アンナ・コムネナの生涯と作品』(白水社, 2020年)などがあります。これらの著書は、ビザンツ帝国の政治、社会、文化、歴史を多角的に分析し、読者に深い洞察を与えています。また、共著や編著として、栗生澤猛夫氏との『世界の歴史 (11) ビザンツとスラヴ』(中央公論社, 1998年/中公文庫, 2009年)、根津由喜夫氏との『ビザンツ 交流と共生の千年帝国』(昭和堂, 2013年)などがあります。

さらに、翻訳・監修の分野でも多くの業績を残しており、ミシェル・カプラン著『黄金のビザンティン帝国 文明の十字路の1100年』(創元社, 1993年)、ジュディス・ヘリン著『ビザンツ 驚くべき中世帝国』(白水社, 2010年/2021年新版)、ジョナサン・ハリス著『ビザンツ帝国の最期』(白水社, 2013年/2022年新版)、『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』(白水社, 2018年/2023年新版)、ジュディス・ヘリン著『ラヴェンナ ヨーロッパを生んだ帝都の歴史』(白水社, 2022年)、デイヴィッド・ポッター著『テオドラ 女優からビザンツ皇后、聖人へ』(白水社, 2025年)などの翻訳・監修を手がけています。

井上浩一氏は、ビザンツ帝国史研究の発展に多大な貢献をしただけでなく、教育者として、また一般読者に向けてビザンツ帝国の魅力を発信し続けています。その活動は、歴史学の分野だけでなく、広く社会に影響を与え続けています。

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