井上省三

井上省三：日本の毛織物工業の父

井上省三（いのうえ しょうぞう、1845年11月14日 - 1886年12月14日）は、日本の実業家、技術者であり、「日本の毛織物工業の父」として知られています。彼は日本の近代化に大きく貢献しました。

生い立ちと留学

1845年、井上省三は現在の山口県下関市である厚狭郡宇津井村で生まれました。その後、山陽小野田市の厚狭毛利家の家臣である井上家の養子となります。山口兵学校で蘭学を学んだ後、1869年に木戸孝允と出会い、翌年にはヨーロッパへ留学する機会を得ます。

当初、井上の留学目的は兵学でしたが、殖産興業へと方向転換し、織物工場で製絨技術を学ぶことになります。この決断が、後の日本の毛織物工業の発展に大きく寄与することになりました。

千住製絨所の設立

1875年に帰国した井上は、内務省に出仕し、官営の製絨所設立準備のために再びドイツへ派遣されます。彼はドイツで機械を購入し、技術者を雇用、さらにドイツ人女性と結婚して帰国しました。1879年、日本初の毛織物工場である「千住製絨所」が開業し、井上はその初代所長に就任。日本の毛織物工業の礎を築きました。

千住製絨所の設立は、日本の近代工業化における重要な一歩でした。井上は、西洋の技術を導入し、日本の風土に合わせた毛織物生産を確立することで、国内の需要に応えるとともに、輸出産業の育成にも貢献しました。

早すぎる死と後世への影響

しかし、井上省三は1886年12月14日に病気のため42歳という若さで亡くなります。彼の墓は熱海市の海蔵寺にあります。

井上の死後も、彼が設立した千住製絨所は発展を続け、日本の毛織物工業を牽引しました。彼の功績を称え、没後50年となる1936年には、千住製絨所の構内に銅像が建設されました。この銅像は、井上省三が日本の産業発展に果たした役割を後世に伝えるシンボルとなっています。

井上省三の生涯は、日本の近代化における産業の重要性と、先駆者たちの努力を物語るものです。彼の功績は、今もなお日本の産業界に影響を与え続けています。

参考文献

木代修一『井上省三伝』1938
山陽町郷土史研究会『山陽史話 第１輯』1970
日本毛織株式会社百年史編纂室『日本毛織百年史』1997
『日本毛織工業創始者井上省三略暦』1936
三木克彦『井上省三とその妻子-ルードルフ・ケーニッヒの手記から‐』1986
三木克彦『物語南千住の製絨先覚者大関増業と井上省三』1981
山口県魅力発信サイトきらりんく｜おもしろ山口学
「[日本毛織]]物工業の父」井上省三と[[千住製絨所]

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