厚狭郡

厚狭郡：山口県を彩る歴史の軌跡

厚狭郡は、山口県に存在した郡です。古くから歴史に彩られたこの地は、現代の行政区分を知る上で重要な役割を担っています。本稿では、厚狭郡の興亡、その変遷、そして現代社会との関わりについて詳しく探ります。

古代から近世：郡域と行政の変遷

737年（天平9年）の古文書にその存在が確認できる厚狭郡は、当初「あづさ」と呼ばれていました。南北朝時代から寛文4年（1664年）までは、厚東郡と厚西郡に分かれていた時期もありました。さらに、吉田郡が一時的に分立していたことも記録に残っています。これらの郡は、私郡として独自の運営が行われていました。

慶安3年（1650年）には、長州藩の行政組織である宰判が設置され、厚狭郡内には船木宰判と吉田宰判が置かれました。これは、藩政時代の郡の統治体制を示す重要な出来事です。

近世以降：明治維新と町村制

明治維新後、廃[[藩置県]]により山口県と豊浦県の管轄となりましたが、第1次府県統合を経て、全域が山口県の管轄下に置かれました。明治初期には、いくつかの村の合併が行われ、郡域の整理が進められました。

明治12年（1879年）1月6日、郡区町村編制法の施行により、行政区画としての厚狭郡が発足。郡役所は船木村に置かれました。この発足は、近代的な地方行政制度の導入を示すものです。

明治22年（1889年）4月1日には、町村制が施行され、複数の村が合併して新たな村が誕生しました。宇部村、藤山村、厚東村、二俣瀬村、小野村、吉部村、万倉村、船木村、厚南村、須恵村、高千帆村、厚西村、出合村、生田村、王喜村、吉田村の16の村が誕生しました。

近代化と市町村合併：20世紀の厚狭郡

明治29年（1896年）9月1日には郡制が施行され、さらに大正時代には、船木村が町制施行し船木町となりました。その後、厚西村が厚狭町、須恵村が小野田町と改称・町制施行するなど、地域社会の変化が反映されました。宇部村は宇部市として郡から離脱しました。

昭和時代に入ると、郡会が廃止され、郡役所も廃止されました。その後、市町村合併が活発に進みます。出合村が厚狭町に編入、藤山村が宇部市に編入、高千帆村が町制施行して高千帆町となりました。さらに、小野田町と高千帆町が合併して小野田市となり、郡から離脱しました。厚南村も宇部市に編入されました。

生田村は町制施行し埴生町となりました。その後、厚東村、二俣瀬村、小野村が宇部市に編入され、船木町、吉部村、万倉村が合併して楠町となりました。王喜村と吉田村は下関市に編入されました。

最後に、厚狭町と埴生町が合併して山陽町となり、平成17年（2005年）3月22日、山陽町と小野田市が合併して山陽小野田市となり、厚狭郡は消滅しました。楠町も宇部市に編入されています。

厚狭郡：歴史の遺産

厚狭郡の歴史は、古代からの郡域の変遷、明治時代の町村制施行、そして昭和・平成期の市町村合併という、日本の地方行政制度の変遷そのものを映し出しています。その歴史的変遷を知ることは、現在の行政区分や地域社会の理解を深める上で非常に重要です。 厚狭郡は消滅しましたが、その歴史は、山陽小野田市、宇部市、下関市といった現代の都市に脈々と受け継がれています。

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