井上節山因碩

井上節山因碩（いのうえ せつざんいんせき）

井上節山因碩（1820年 - 1856年）は、江戸時代の囲碁棋士であり、家元井上家の十二世井上因碩として知られています。六段。隠居後の号である「節山」を付けて、井上家代々と区別されます。井上幻庵因碩門下。

本因坊丈和の長男として生まれ、幼名は戸谷梅太郎と名付けられました。後に水谷琢順の養子となり水谷順策と改名。その後、井上家の跡目となり井上秀徹を名乗りました。

経歴

本因坊秀和とは同年であり、少年時代には互いに切磋琢磨し、四段までは同時に昇段しました。13歳の時に剃髪して道和に改名。その後、眼病により21歳まで碁から遠ざかることになります。その間に秀和が本因坊丈策の跡目となっていたため、丈和の計らいで還俗し、葛野忠左衛門と名乗り、諸国を行脚して各地で対局しました。天保7年(1836年)に本因坊家外家の水谷家跡目琢廉が早逝したため、水谷琢順の養子となります。

天保15年には、井上幻庵因碩から丈和に依頼して、一旦葛野忠左衛門に戻した後、井上家の養子となり、翌年跡目となって井上秀徹となりました。幻庵因碩とは秀徹先で多くの師弟対局を行い、特に六段時、弘化2年(1845年)9月の秀徹中押勝の出来を見て幻庵は退隠を決意したと言われています。弘化3年に御城碁に初出仕し、安井算知 (俊哲)に先番3目勝ちを収めました。御城碁には計3局を出仕しています。またこの時期、本因坊門人との対局も多く、安田秀策（本因坊秀策）には秀策先相先の手合でした。

嘉永元年(1848年)に幻庵因碩が隠居し、秀徹が十二世井上因碩を継承しました。しかし、この頃から節山の精神には変調が見られるようになります。嘉永2年、門人嶋崎鎌三郎を自身の内儀と姦通したとの疑いをかけ斬殺するという事件を起こし、完全に精神が崩壊してしまいます。鎌三郎の父が井上家に縁のある細川家家臣であったことにより、この事件は内々に済ませられたものの、隠退を余儀なくされ、節山と号して相州相原で療養生活を送ることになりました。井上家は林家門人の松本錦四郎が継ぎ、十三世井上因碩となっています。節山はその後復帰することなく、36歳という若さで亡くなりました。

弘化3年には、赤星因徹の著書である「棋譜・玄党」と「手談五十図」の合本「玄覧」を出版しています。

御城碁戦績

1846年(弘化3年) 先番3目勝 安井算知
1848年(嘉永元年) 先番4目負 阪口仙得
1848年(嘉永元年) 先番2目負 安井算知

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
福井正明『幻庵因碩 打碁集-局前人なく局上石なし』誠文堂新光社 2005年

外部リンク

木石庵「節山因碩」

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