井上義啓

井上義啓：活字プロレスの先駆者

井上義啓（1934年7月20日 - 2006年12月13日）は、伝説的なプロレス雑誌『週刊ファイト』の元編集長であり、本名は井上力。岡山県出身。

概要

井上は「活字プロレス」の始祖として知られ、新大阪新聞社で社会部・運動部記者を経て、1967年に『週刊ファイト』の初代編集長に就任。通称「I（アイ）編集長」として親しまれた。

『ファイト』では、アントニオ猪木を軸に据え、独自の視点と情熱を込めた紙面作りを展開。その革新的な編集スタイルは、ターザン山本をはじめとする後続の「活字プロレス」に大きな影響を与えた。

「プロレスは底が丸見えの底なし沼」「平成のデルフィンたち」「バード」「殺し」など、数々の名言を生み出したことでも知られる。

酒・煙草を一切嗜まず、生涯独身を貫き、その人生のほとんどをプロレスに捧げた。取材活動の傍ら、オフィスにファンから電話がかかってくると、近くの喫茶店に呼び出してプロレス談義に花を咲かせたという。このエピソードが、後に『喫茶店トーク』と呼ばれるようになった。

『週刊ファイト』編集長として

編集長として、井上はタブーにも果敢に挑んだ。裏情報に近い記事を掲載したことで、力道山の怒りを買い、身の危険を感じたこともあったという。アントニオ猪木を支持する姿勢が強かった一方で、当時マイナーだった国際プロレスや女子プロレスにも積極的にスポットを当てた。特に、偏見の強かった全日本女子プロレスを、デイリースポーツと共に支援したことは特筆に値する。

猪木への傾倒が強かったため、ジャイアント馬場率いる全日本プロレスとの関係は良好とは言えなかった。しかし、三沢光晴、川田利明らの四天王プロレスが隆盛を極めるようになると、その魅力を高く評価するようになった。

井上義啓の功績は、単なるプロレス報道にとどまらず、プロレスという文化を深く掘り下げ、その魅力を広く伝えることにあった。彼の情熱と革新的な精神は、プロレスファンのみならず、多くの人々に影響を与え続けている。

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