井上義雄

井上義雄 – 明治・大正時代の将棋棋士

井上義雄（いのうえ よしお、1865年 - 1920年）は、明治から大正にかけて将棋界で名を馳せた八段の棋士です。京都府伏見区出身で、彼の本名は池上益太郎です。将棋界での活躍を通じて、後の将棋連盟の基礎を築いた重要な人物でもありました。

初期の棋歴と修業

井上は、8歳のときに原田仁平二段から将棋を学び、翌年の大会で堀半七五段と対局し、その結果は指し分けでした。16歳で大阪の名棋士、小林東伯斎八段に入門しました。小林は名人天野宗歩の弟子ということもあり、井上もその影響を受けました。井上は18歳で三段、23歳で五段に昇進し、25歳のときには四国、中国、九州で将棋の修行を行いました。その後、大阪に戻り六段、さらに7段に昇格します。これらの段位は、師である小林によって認定されたと考えられています。

上京と八段昇段

1906年、42歳の時に上京し、八段の称号を得ました。当時の九段・関根金次郎は先に八段に昇格しており、井上は年長者であるため、関根から常に敬意をもって扱われていました。また、関根は小野五平名人との不仲から、井上を名人の後継者に据えようと画策していたそうです。

対局と同盟会

1907年には、関根、井上、小菅剣之助との三者による対局が神戸新聞によって企画され、井上は関根と戦い一勝三敗という結果でした。1909年には関根と共に「将棋同盟会」を結成し、翌1910年には「将棋同志会」へと移行しました。

名人後継者決定戦

1915年、井上は小野名人の後継を決めるための大会に参加しました。当初、小野名人が後継者に選んでいた坂田三吉八段との対局が予定されていたが、関根の都合によって井上が坂田と対局することになりましたが、井上は敗れています。坂田との再戦が予定されたものの、井上は延期を申し入れ、坂田は他の棋士と対局を行いました。12月には関根と対戦し、一勝一引き分けという結果でした。

最後の年

1920年、井上は小野名人に先立って心臓病により急死しました。享年56。彼の死は将棋界に大きな影響を与え、多くの愛弟子たちを残していきました。

人物像

井上は長身で口ひげを蓄え、鋭い眼光を持った美男と言われています。彼は将棋だけでなく、連珠や囲碁にも秀でており、それぞれの教授業をも行っていました。

弟子と後の影響

彼の弟子には大崎熊雄と宮松関三郎などがいます。特に大崎は多くの弟子を育て上げ、井上の系譜は現代の棋士たちへと受け継がれています。

井上義雄はその卓越した棋士としての才能だけでなく、教育者としても後世に多大な影響を与えた人物であり、日本の将棋界における重要な礎となりました。

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