井伊直亮

井伊直亮（いい なおあき）

井伊直亮は、江戸時代後期、近江彦根藩の第15代藩主であり、江戸幕府の大老を務めた人物です。特に、幕末の動乱期に活躍した井伊直弼の兄であり、養父としても知られています。

生涯

寛政6年（1794年）に、第14代藩主・井伊直中の三男として江戸で生を受けました。兄の直清が病弱であったため、文化2年（1805年）に直中から後継者として指名され、文化9年（1812年）に父の隠居に伴い家督を継承し、第15代藩主となりました。

文化12年（1815年）には、将軍・徳川家斉の名代として日光東照宮に参拝し、天保6年（1835年）には大老に任じられました。しかし、天保12年（1841年）に自ら大老職を辞任しています。これは、同年閏1月に家斉が死去し、将軍・徳川家慶や老中首座・水野忠邦によって旧家斉派が次々と粛清される中で、直亮がその巻き添えになることを恐れたためと考えられています。

藩主として彦根に戻ってからは、洋書を積極的に購入したり、蘭学者を登用するなど、開明的な政策を推進しました。しかし、これらの政策は守旧派の家臣からは理解を得られず、「むつかしき殿様」と揶揄されることもありました。その後、幕府から相模国の海岸警備を命じられると、西洋式軍隊の練成に尽力し、列強の開国要求に対応しようとしました。また、藩内にいた国友一貫斎が反射望遠鏡を発明したという知らせを聞くと、非常に喜んだと伝えられています。

直亮は雅楽にも造詣が深く、自ら演奏することもあったようです。また、楽器の収集家としても知られており、そのコレクションの一つである銘「分龍雨」の楽箏（制作者：治光）は、現在武蔵野音楽大学楽器博物館に所蔵されています。

実子がいなかったため、弟（直中の十一男）の直元を養嗣子としていましたが、弘化3年（1846年）に早世したため、その弟（直中の十四男）で国元にいた直弼を新たに養嗣子としました。

嘉永3年（1850年）10月1日に彦根で死去。享年57歳。跡は養子の直弼が継ぎました。

系譜

父：井伊直中
母：親光院 親姫（南部利正の娘）
正室：龍華院 餐姫（松平頼儀の娘）
継室：耀鏡院 留姫（井伊直朗の娘）
養子：井伊直元（実弟）
養子：井伊直弼（実弟）

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