井伊直愛

井伊直愛（いい なおよし）

井伊直愛は、1910年7月29日に生まれ、1993年12月2日に没した日本の水産学者・政治家です。旧彦根藩主である井伊家の第16代当主であり、幕末の大老・井伊直弼の曾孫にあたります。

生涯

井伊直愛は伯爵井伊直忠の庶子として生まれました。幼少の頃は海軍軍人を志望していましたが、体格の問題と当時の軍における藩閥を嫌い、学問の道に進みました。東京帝国大学農学部水産学科に進学し、同大学院で研究を重ねました。

専門はアミ類であり、約50種もの新種を発見するという功績を残しました。東京大学農学部嘱託、文部省資源科学研究所、滋賀県水産試験場、滋賀大学経済学部講師などを歴任し、研究者として活動しました。

1953年からは彦根市長を連続9期務め、「殿様市長」として親しまれました。市長在任中の1968年には、桜田門外の変以来の歴史的なわだかまりを解消するため、水戸市との親善都市盟約を締結しました。この盟約は、井伊家当主としても、彦根市長としても、大きな意義を持つものでした。

市長退任後も水産学の研究を続け、1961年には「極東海域におけるアミ科の分布に関する研究」という25年がかりの研究論文で東京大学より農学博士の学位を取得しました。

1993年12月2日、胃癌のため彦根市内の自宅で逝去。83歳でした。

栄典

1989年には、長年の功績が認められ、勲二等瑞宝章を受章しています。

家族

双子の弟である井伊直弘（別名：井伊正弘）も昆虫学者であり、農林省に勤務しました。また、彦根城博物館の初代館長も務めています。

妻の井伊文子は歌人・随筆家であり、琉球王朝最後の国王である尚泰王の曾孫にあたります。長男の井伊直豪が井伊家第17代当主となり、孫娘の婿養子である井伊直岳が第18代当主となっています。

井伊直愛は、水産学者、政治家としてだけでなく、彦根の歴史と文化に深く貢献した人物として、今もなお多くの人々に記憶されています。

参考文献

人事興信所編『人事興信録 第6版』人事興信所、1921年。
人事興信所編『人事興信録 第7版』人事興信所、1925年。

関連項目

安居喜造
彦根市#著名人

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