井川ダム

井川ダム（いかわダム）

静岡県静岡市葵区井川にある井川ダムは、一級水系である大井川本川の上流に位置する重要な水力発電用ダムです。ダムの建設は、当初1906年に設立された日英水力電気から発展した大井川電力によるものであり、電力供給の必要性が高まる中での計画が進められてきました。

沿革

1938年に日本発送電が全施設を接収した後、戦後に電力事業の再編が行われ、中部電力が大井川水系の全ての発電施設を管理することになりました。電力需要が急増する中、水力発電事業が国策として進められ、大井川においても大規模なダム建設が必要とされました。1951年に井川ダムと奥泉ダムの計画が立てられました。

日本初の中空重力ダム

井川ダムは、日本初の中空重力式コンクリートダムとして設計され、高さ103.6メートルの巨大なダムとなりました。中部電力はこの新しい施工方法に挑戦し、国際的な技術指導を受けながらダムを建設しました。中空重力式とは、堤体内部に空洞があることでコンクリートの使用量を抑えつつ、安定性と経済性を兼ね備える特徴があります。

工事は1956年に奥泉ダムが完成し、翌年に井川ダムが竣工されたことで、井川発電所が稼働を開始しました。井川ダムは「井川五郎ダム」とも呼ばれ、初代社長である井上五郎の名にちなんでいます。

大井川鐵道井川線の重要性

井川ダムの建設には、大井川鐵道井川線の整備が不可欠でした。1927年に開通したこの鉄道は、ダム建設用の資材運搬を目的としており、井川村へつながる交通網が確立されました。現在では観光路線としての役割も担い、訪れる多くの観光客に利用されています。

井川村の再生と補償

ダムの建設により、井川村の主要な集落の一部が水没することとなりました。地元住民は補償を求め、「交通の障害を迅速に解消する」「村の文化水準を向上させる」「個人補償を確実に行う」といった三原則に基づき、中部電力と交渉しました。これにより新しい井川村の形成が進められ、インフラ整備が行われました。

井川湖と観光資源

井川ダムによって形成された井川湖は、釣りや遊覧船の運航が楽しめる観光スポットとして親しまれています。年間を通じて多くのイベントが開催され、紅葉が美しい季節には観光客で賑わいます。井川展示館では、水力発電の仕組みや歴史が紹介されており、地域の理解を深める場となっています。

奥泉ダムの概要

井川ダムの下流には、奥泉ダムがあります。こちらも大井川水系の重要な発電施設であり、高さ44.5メートルの重力式コンクリートダムとして運用されています。一般にはアクセスが制限されていますが、大井川鐵道井川線からの眺望を楽しむことができます。

まとめ

井川ダムは静岡県の風景を一変させ、地域に新たな電力供給の道を開いた重要なインフラです。ダム周辺では自然と人々の生活が共存し続け、訪れる観光客にとっても魅力的なスポットとなっています。

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