井戸清人

井戸清人氏は、1950年10月30日に東京都で生まれました。東京工業大学（現在の東京科学大学）理学部数学科で微分位相幾何学を専攻し、当初は大学院への進学を考えていましたが、先輩の勧めで1973年に大蔵省（現財務省）に入省しました。理系出身者としては異例のキャリアを歩み始め、主税局国際租税課に配属されました。

その後、ザールラント大学への留学、主計局調査課調査係長を経て、1978年7月には下館税務署長に就任しました。1979年7月には大臣官房秘書課長補佐（財務官室）、1980年2月にはフランクフルト総領事館副領事、同年7月には同総領事館領事として海外での勤務も経験しました。

1984年7月には国際金融局企画課長補佐（総括・企画）となり、1989年には米州開発銀行財務局次長を務めました。1998年からは副財務官としてアジア通貨危機への対応に尽力し、アジア地域金融協力構想の実現に貢献しました。1999年には在アメリカ合衆国日本国大使館財務公使としてワシントンD.C.に赴任、2002年には財務省大臣官房審議官（国際局担当）、2003年には財務省国際局次長に就任しました。

2004年には、理系学部出身者としては初となる財務省本省の局長として国際局長に就任しました。その明るく社交的な性格は、理系出身の官僚としては珍しいと評されました。2006年からは日本銀行理事を務め、日本銀行金融ネットワークシステムなどの運営を担当しました。2011年には国際経済研究所副理事長に就任、2014年には日本電産取締役に就任しました。

日本銀行理事時代に知り合った庄山悦彦氏の誘いで、蔵前工業会の活動にも参加し、2016年には蔵前工業会理事、2018年には蔵前経営者懇話会代表幹事、永守学園理事に就任しました。2020年には蔵前工業会理事長に就任し、瑞宝中綬章を受章しました。2021年にはクラレ取締役、ジャパンインベストメントアドバイザー取締役に就任しました。また、財務省関税・外国為替等審議会委員、東京工業大学経営協議会委員、東京二期会評議員なども歴任しました。

井戸氏の入省同期には、金田勝年氏（法務大臣、外務副大臣）、新井将敬氏（衆議院議員）、佐藤隆文氏（金融庁長官）など、後に各界で活躍する人物が多数いました。

井戸清人氏は、理系の知識とグローバルな視点を持ち、日本の経済・金融政策に大きく貢献した人物として、その足跡は記憶されるでしょう。

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