井浦祥二郎

井浦祥二郎：潜水艦作戦を担った海軍軍人の生涯

井浦祥二郎は、1902年（明治35年）に福岡県朝倉市で生まれ、旧制福岡県立朝倉中学校を経て海軍兵学校に入校しました。海軍兵学校では、入校時293名中70番、卒業時255名中31番という成績を収め、その後の海軍軍人としてのキャリアをスタートさせました。

海軍軍人としてのキャリア

井浦は、海軍兵学校卒業後、海軍少尉候補生として練習艦隊での航海を経験し、その後、各艦での乗組を経て、潜水艦乗りとしての道を歩み始めます。水雷学校や潜水学校での教育を経て、潜水艦の航海長や水雷長、艦長を歴任し、潜水艦戦のエキスパートとしての地位を確立していきます。海軍大学校も卒業し、着実にキャリアを重ねていきました。

太平洋戦争中には、軍令部作戦部や第六艦隊で参謀として潜水艦作戦の立案に携わり、潜水艦部発足にも尽力するなど、その手腕を発揮しました。特に、潜水艦に関する中央機関の必要性を訴え、その実現に大きく貢献したことは、彼の功績として特筆されるでしょう。

戦争と慰安所問題

井浦の自著によると、戦時中、軍は将兵の娯楽のため、各地の基地に慰安所を設置することを公然と指示しており、各司令部がその管理を行っていたと述べています。ペナン島の潜水艦基地司令部に勤務していた際には、自身が慰安婦問題に直面し、「わざわざ女性を戦地にまで連れてきたことをかわいそうだ」と感じたと記しています。この経験から、「現地女性を慰安婦として募集した方がよかった」という考えに至ったという記述は、当時の軍の倫理観や、井浦自身の葛藤を物語っています。また、同期生の妻が戦中の井浦の心遣いに感謝の念を述べていることからも、彼の人間性が垣間見えます。

戦後

終戦後、井浦はB級戦犯として巣鴨刑務所に収監されました。その後、仮釈放されましたが、その戦争責任は、彼自身の心に深く刻まれたことでしょう。

年譜

1902年（明治35年）3月31日 - 福岡県朝倉郡朝倉村（現在の朝倉市）に生まれる。
1920年（大正9年）8月26日 - 海軍兵学校入校。
1923年（大正12年）7月14日 - 海軍兵学校卒業、海軍少尉候補生として浅間乗組。
1924年（大正13年）12月1日 - 海軍少尉任官。
1926年（大正15年）12月 - 海軍中尉に昇進。
1928年（昭和3年）12月 - 海軍大尉に昇進。
1933年（昭和8年）12月1日 - 海軍大学校甲種第33期学生となる。
1935年（昭和10年）11月26日 - 海軍大学校甲種卒業、海軍少佐に昇進。
1944年（昭和19年）5月1日 - 海軍大佐に昇進。
1948年（昭和23年）1月16日 - 連合国からの戦争犯罪人指定により身柄収監。
1952年（昭和27年）2月28日 - 身柄仮釈放。
1965年（昭和40年）7月6日 - 死去。

井浦祥二郎は、その生涯を通して、日本の海軍力増強に貢献し、潜水艦作戦の発展に尽力しました。しかし、その一方で、戦争という時代の中で、多くの苦悩や葛藤を抱えていたことも、彼の著作から読み取ることができます。彼の人生は、戦争というものが、個人に与える影響の大きさを物語っていると言えるでしょう。

主な著述刊行

『潜水艦隊』ソノラマ文庫戦記シリーズ、新版1992年。朝日ソノラマ、1998年。
『潜水艦隊』学研M文庫、2001年。
* 『潜水艦隊』中公文庫（戸高一成解説）、2023年。

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