井笠鉄道記念館

井笠鉄道記念館：軽便鉄道の記憶を今に伝える

岡山県笠岡市山口に位置する井笠鉄道記念館は、かつて井笠鉄道本線の新山駅として利用されていた場所です。ここでは、1971年に廃止された井笠鉄道の車両や資料が保存・展示されており、鉄道の歴史を今に伝えています。

記念館設立の背景

井笠鉄道は、数ある軽便鉄道の中でも比較的遅くまで運行を続け、多くの車両が残されていました。井原笠岡軽便鉄道の創立70周年を記念して、1981年に旧新山駅舎を再利用し、井笠鉄道記念館が開館しました。

廃止から30年以上が経過した現在でも、保存状態は良好です。当初は、廃線時の新山駅長であった田中春夫氏が館長を務め、家族とともに記念館を管理していました。2002年には産業考古学会の推薦産業遺産に選定され、2009年には田中館長自身も産業考古学会の保存功労賞を受賞しています。

存続の危機と再生

2012年11月、井笠鉄道がバス事業から撤退し、事業清算手続きに入ったことで、記念館の所有権は破産管財人に移り、処分対象資産となりました。しかし、地元住民からの強い存続希望を受け、2013年7月には新山地区自治会が記念館の管理を引き受ける意思を表明。笠岡市に建物などの取得を求める要望書を提出しました。

その結果、笠岡市は産業遺産としての資料価値と地域振興への貢献を認め、2013年8月に記念館の敷地・建物・展示資料の全てを約180万円で買い取ることで破産管財人と合意。傷みの激しい箇所を修繕し、トイレを一新した上で、2014年3月30日に笠岡市井笠鉄道記念館としてリニューアルオープンしました。現在は、笠岡市教育委員会が管理し、笠岡市と新山地区自治会が共同で運営を行っています。

記念館の概要

記念館の敷地面積は528平方メートルで、木造平屋の旧駅舎（36平方メートル）が当時のまま保存されています。駅舎内には、タブレット閉塞機、往時の写真、切符、沿線観光案内図、入鋏器、レール断面などが展示されています。

笠岡市への移管後、入館者には井笠鉄道の歴史と記念館・展示物を解説したパンフレットが配布され、記念スタンプも設置されています。

駅舎の北側には、以下の車両が静態保存されています。

1号機関車: 1913年、オーレンシュタイン・ウント・コッペル-アルトゥール・コッペル社（ドイツ）製の蒸気機関車。西武山口線で「おとぎ列車」の牽引に使用されていた時期もあります。
ホハ1: 1913年、日本車輌製の木造客車。
ホワフ1: 1914年、日本車輌製の木造貨車。

利用案内

開館時間: 午前9時から午後5時
休館日: 月曜日（祝日の場合はその翌日）、年末年始（12月29日から1月3日）
入館料: 無料

アクセス

バス: 井笠バスカンパニーの笠岡駅発小田経由矢掛行、または矢掛（小林）発小田経由笠岡駅行きに乗車し、「新山」バス停下車。徒歩約5分。
乗合タクシー: 井笠バスカンパニーの予約制乗合タクシー笠岡駅発尾坂上行（月曜日・金曜日のみ運行、祝日は運休）に乗車し、「JA倉敷かさや北前」下車。すぐ。
自家用車: 岡山県道48号笠岡美星線沿い。山陽自動車道鴨方インターより約15分、笠岡インターより約10分。JR笠岡駅から約20分、井原鉄道小田駅から約15分。

井笠鉄道記念館は、軽便鉄道の貴重な遺産を保存し、その歴史を後世に伝えるための施設です。鉄道ファンはもちろん、地域の歴史に興味のある方にもおすすめです。ぜひ一度、足を運んでみてください。

参考文献

『軽便鉄道』（松本典久著、保育社、1982年）
『消えた鉄道を歩く』（堀淳一著、講談社、1986年）
『鉄道廃線跡を歩くII』（宮脇俊三編著、日本交通公社出版事業局、1996年）

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