亘理氏

亘理氏（わたりし）とは

亘理氏は、日本の武家・士族であり、陸奥国亘理郡を拠点とした氏族です。古くは「曰理」とも表記されました。

亘理氏の歴史

鎌倉時代から安土桃山時代

亘理氏の祖は、千葉常胤の三男である武石胤盛です。奥州合戦での功績により、父から亘理郡を含む三郡を分け与えられ、武石氏を名乗りました。14世紀初頭、その曾孫である宗胤が亘理に入り、小堤城を拠点としました。そして、暦応2年（1339年）に7代目の広胤が「亘理氏」を称するようになったとされています。

16世紀初頭には、急速に勢力を拡大していた伊達稙宗の傘下に入りました。戦国時代の当主・亘理宗隆には男子がいなかったため、稙宗の娘との間に生まれた綱宗と元宗を養子に迎えました。

葛西大崎一揆の後、伊達氏が岩出山城へ移ると、亘理氏も遠田郡涌谷城へと移されました。元宗の子である重宗は、伊達政宗の庶子・宗根を婿養子として迎えました。宗根は重宗の隠居領である栗原郡高清水城を継ぎ、亘理氏を称しました（後に登米郡佐沼城へ移り、佐沼亘理家となります）。

江戸時代の涌谷伊達家

重宗の嫡男で家督を継ぎ、涌谷を領していた定宗は、慶長11年（1606年）に伊達姓を与えられ、伊達一門に列しました。これが涌谷伊達家の始まりです。涌谷伊達家は、江戸時代を通して仙台藩において遠田郡涌谷要害を中心に2万2600石を領しました。

明治時代以降の亘理家

幕末維新期の当主であった胤元は、明治2年（1869年）に伊達姓から亘理姓に復しました。明治17年（1884年）に華族制度が定められた際、旧万石以上の陪臣は男爵の候補に挙げられていましたが、最終的には対象外となったため、亘理家は士族のままでした。

明治15年ごろ作成された『三条家文書』には、亘理家の旧禄高が2万2600石であること、所有財産や職業は空欄、貧富の状況は「可」と記されています。

明治15年8月に胤元が死去し、長男の胤正が家督を相続。胤正は養鶏業など農事改良に尽力し、大正4年（1915年）には衆議院議員に当選しました。

明治33年（1900年）には、宮内省の審査書類で亘理家が男爵位の授爵候補として検討されましたが、旧禄高の記録が曖昧であったことなどから、最終的に授爵は見送られました。そのため、亘理家が華族になることはありませんでした。

歴代当主

亘理氏（武石氏）

武石胤盛
武石胤重
武石胤氏
武石宗胤
武石治胤
武石高広
亘理広胤
亘理行胤
亘理重胤
亘理胤茂
亘理茂連
亘理宗清
亘理茂元
亘理元胤
亘理宗元
亘理宗隆
亘理元宗 - 伊達稙宗の子、母は宗隆の娘
亘理重宗
亘理定宗

涌谷伊達家

伊達定宗
伊達宗重
伊達宗元
伊達村元
伊達村定
伊達村盛
伊達村胤
伊達村倫 - 伊達宗村の子
伊達村常 - 石川村俊の九男
伊達村清
伊達義基
伊達邦隆
亘理胤元 - 明治2年（1869年）亘理に復姓
亘理胤正
亘理正彦 - 元・元涌谷村長

佐沼（高清水）亘理家

亘理宗根 - 伊達政宗の子
亘理宗喬 - 伊達宗根の孫、亘理宗廣の子
亘理元篤（宗紹・藤一郎） - 伊達宗元の子、伊達村元の弟
亘理定根 - 伊達村定より1字を賜う
亘理倫篤 - 伊達村倫より1字を賜う。宝暦7年（1757年）高清水から佐沼へ移封
亘理常篤 - 伊達村常より1字を賜う
亘理清胤 - 伊達村清より1字を賜う
亘理基胤 - 伊達義基より1字を賜う
亘理隆胤 - 伊達邦隆より1字を賜う。登米郡佐沼町初代町長

参考文献

涌谷町史編纂委員会 編『涌谷町史』 上、宮城県遠田郡涌谷町、1965年10月。
亘理町史編纂委員会 編『亘理町史』 上、宮城県亘理郡亘理町、1975年。
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年。

関連項目

* 亘理伊達家 - 伊達氏の分家で、亘理城主の家系。涌谷伊達家とは異なる。

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