千葉常胤

千葉常胤：鎌倉幕府成立に貢献した関東の武士

千葉常胤（ちばつねたね）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した、千葉氏第3代当主にして、その中興の祖と称される武将です。下総国を拠点とし、在地領主から鎌倉幕府の有力御家人へと成長を遂げた彼の生涯は、関東武士の隆盛と、鎌倉幕府成立という大きな歴史的転換期を象徴するものです。

地位向上への道のり：相馬御厨をめぐる争い

常胤の父、千葉常重は下総国の有力な在庁官人でした。しかし、相馬御厨を巡る争いに巻き込まれ、権力者との対立を余儀なくされます。常重は所領を伊勢神宮に寄進するものの、下総守藤原親通によって所領を奪われ、逮捕・監禁される事態に陥ります。

常胤は、父の後を継ぎ、この問題の解決に奔走します。下総国衙への未進分の官物を納めるなど、地道な努力を重ね、相馬郡司職の回復と相馬郷の返却を実現しました。そして、改めて伊勢神宮に所領を寄進することで、千葉氏の支配権を確固たるものとしました。この過程で、源義朝もまた、権力争いに介入しており、常胤の立場は複雑なものであったことがわかります。常胤は、義朝を侵略者の一人と認識していた節があり、単なる調停者として見てはいなかったことが、彼自身の文書からも明らかになっています。

保元・平治の乱と源氏とのつながり

保元・平治の乱において、常胤は源義朝に従軍します。この経験は、後の源頼朝との関係に影響を与えたと考えられます。ただし、保元の乱での常胤の動員は官符による公式なものであり、義朝の郎党として一意に動いていたわけではない点に注意が必要です。

平治の乱後も、常胤は相馬御厨の支配権を巡って佐竹義宗と激しく争います。この争いは、伊勢神宮を巻き込んだ複雑なものでしたが、最終的には佐竹義宗が勝利します。この間、常胤は、源義朝の親族である源義隆の子を密かに保護し育てています。この子が、後に源頼隆として、源氏再興の過程で重要な役割を果たすことになります。

源頼朝への加勢と鎌倉幕府への貢献

治承4年（1180年）、源頼朝が伊豆国で挙兵し、石橋山の戦いで敗北した際、頼朝は常胤に援助を求めます。常胤は、当初は躊躇したものの、息子の胤正や胤頼らの進言を受け、頼朝への加勢を決意します。この決断には、下総国府や親平氏派との対立関係、相馬御厨をめぐる過去の歴史などが背景にあったと考えられます。

常胤は、一族を率いて頼朝に合流し、源氏軍の一員として活躍します。富士川の戦い後には、上洛を急ぐ頼朝を宥め、佐竹氏討伐を進言することで相馬御厨の支配権を取り戻しました。上総広常の誅殺後は、房総平氏の惣領として頼朝を支えますが、北条氏や比企氏の台頭とともに、鎌倉政権の中枢から離れていきます。

その後も、一ノ谷の戦い、奥州合戦など、重要な合戦に参加し、功績を上げます。奥州合戦では東海道方面の大将として活躍し、奥州各地に所領を得ました。頼朝の上洛時には、御家人10人の成功推挙の機会を得ていますが、その賞を孫の常秀に譲っています。香取社造営にも携わり、千葉氏の香取社地頭としての地位を確立する礎を築きました。

千葉氏の基礎を築いた晩年とその後

常胤は、建仁元年（1201年）に84歳で亡くなりました。その死後は、千葉氏嫡流である千葉胤正が家督を継承し、常胤の築いた基盤を引き継ぎました。常胤の子孫は、相馬氏、東氏など、関東各地に広がり、鎌倉幕府における有力な御家人として勢力を拡大していきました。

常胤の生涯は、地域社会の有力者から鎌倉幕府の重要な御家人へと成長していく過程を示す、貴重な歴史的資料となっています。彼の功績は、千葉氏のみならず、関東武士の台頭を理解する上で、欠かすことのできないものと言えるでしょう。 彼の功績を称え、千葉市には常胤の木像が展示され、小冊子にもその名が記されています。これは、千葉県・千葉市の発展に貢献した人物としての評価の現れでしょう。

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