亘理伊達家

亘理伊達家

亘理伊達家は、仙台藩主・伊達氏の分家であり、仙台藩一門の第二席に位置づけられていました。これは、もとより亘理氏であった涌谷伊達家（一門第四席）とは異なる家系です。

概要

その起源は、伊達宗家14代当主・伊達稙宗の子である実元に遡ります。実元の子・成実が慶長7年（1603年）に亘理郡亘理城主となったのが始まりで、江戸時代を通じて家中最大の24,385石を領しました。

しかし、14代当主・伊達邦成の時代に戊辰戦争が勃発。敗北により所領は大幅に削減され、家臣たちの生活を支えるため、邦成自らが一族を率いて北海道への移住を決意します。彼らは現在の伊達市を開拓し、その功績が認められ、明治25年（1892年）に邦成は男爵位を授けられ華族に列しました。

現在、伊達市と旧領である亘理町、山元町、新地町の三町は、「ふるさと姉妹都市」として提携関係を結び、歴史的な繋がりを大切にしています。

亘理伊達家の所領

亘理伊達家は、以下の地域に所領を有していました。（太字は全村拝領）

亘理郡：23か村（小堤、高須賀、中泉、牛袋、十文字、田沢、上郡、下郡、神宮寺、榎袋、蕨、鷺屋、高屋、鹿島、長瀞、吉田、八手庭、大平、小平、鷲足、山寺、浅生原、高瀬）
宇多郡：8か村（谷地小屋、福田、埒木崎、真弓、杉目、小川、大戸浜、今泉）
伊具郡：2か村（小斎、丸森）
本吉郡：5か村（気仙沼、平磯、歌津、清水浜、柳津）

歴代当主

1. 伊達実元
2. 伊達成実
3. 伊達宗実 - 伊達政宗の九男
4. 伊達宗成
5. 伊達基実
6. 伊達実氏（宗氏） - 岩出山伊達宗敏の二男、宗成の婿
7. 伊達村成
8. 伊達村実
9. 伊達村純
10. 伊達村好
11. 伊達村氏
12. 伊達宗賀
13. 伊達宗恒
14. 伊達邦実
15. 伊達邦成 - 岩出山伊達義監の二男、邦実の婿。明治25年（1892年）北海道開拓の功により男爵
16. 伊達基
17. 伊達成勲
18. 伊達廉夫 - 大洲藩主加藤泰秋の六男、基の婿。有珠郡伊達町第4代町長（1943年 - 1946年）

戊辰戦争における逸話

戊辰戦争の際、仙台藩が新政府軍に追われる中、亘理伊達家の当主は、山元町の農家の若者である長左エ門と彦左エ門の二人に和平の使者を託しました。彼らは福島県境の新政府軍へ向かいますが、彦左エ門は人質に取られてしまいます。

長左エ門は「亘理伊達家の重臣を連れてくるように」と命じられ、期限までに戻らなければ彦左エ門は処刑されると告げられます。彼は「必ず戻ってくる」と約束し、藩へ駆け戻ります。

しかし、藩内は抗戦派と恭順派で意見が分かれ、期限が過ぎてしまいます。彦左エ門が処刑されそうになった時、嘆願により3日間の猶予が与えられました。最終的に藩は恭順へと傾き、長左エ門は重臣と共に新政府軍へ赴き、彦左エ門は解放され、休戦交渉が始まりました。

この出来事から152年後の2020年、山元町教育委員会は、この二人の若者の友情を後世に伝えるため、郷土の副読本に収録しました。

参考文献

『山元町誌』（宮城県亘理郡山元町、1971年）
『亘理町史』上巻（宮城県亘理郡亘理町、1975年）
伊達宗弘・伊達君代『仙台藩最後のお姫さま 北の大地に馳せた夢』（新人物往来社、2004年）

関連項目

高橋農場 (北海道伊達市)) - 伊達基の依頼により高橋是清が創設した大規模農場
* 大雄寺 (北海道伊達市)) - 亘理伊達家の菩提寺。亘理から後を追って移転した。

もう一度検索