交野郡

交野郡：古代から近世までの歴史と変遷

交野郡は、かつて日本の河内国に位置し、その後堺県、そして大阪府に属していた郡です。現在の大阪府東部に相当する地域を管轄していました。本稿では、交野郡の古代からの歴史、近世以降の行政区分変遷、そしてその地理的な範囲について詳細に解説します。

古代：貴族の狩場と桜の名所

交野郡の起源は古く、702年頃（大宝2年）に茨田[[郡]]から分割されて成立したとされています。郡衙は現在の交野市郡津にあったという説がありますが、確実な証拠はまだありません。

郡域の大部分は「交野ヶ原」と呼ばれる台地や丘陵地帯であり、農業には適していませんでした。しかし、鳥獣が多く生息し、かつ京都にも近かったことから、貴族たちの狩場として利用されていました。桓武天皇の時代には離宮が置かれ、天皇専用の狩猟場として扱われていたことから、「禁野」という地名が現在も枚方市に残されています。一般の狩猟は禁止されていたと考えられます。

また、交野ヶ原は桜の名所としても知られていました。交野郡にあった惟喬親王の渚院で、在原業平が有名な歌「世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」を詠んだと伝えられています。この歌は、桜の美しさ、そしてその儚さを表現した名歌として広く知られています。

近世以降の沿革：複雑な行政区分変遷

明治維新後、交野郡は複雑な行政区分変遷を経験しました。慶応4年から明治4年にかけて、幕府領や藩領の管轄が幾度となく変更され、大坂裁判所司農局、大阪府司農局、大阪府南司農局、河内県、そして堺県と、移り変わっていきました。廃[[藩置県]]後の明治4年には、一時西大路県の管轄下に置かれた後、再び堺県の管轄に戻っています。

明治7年には、大区小区制の施行により河内国第3大区となり、さらに明治13年（1880年）には郡区町村編制法が施行され、行政区画としての交野郡が正式に発足しました。茨田[[郡]]三矢村の浄念寺に「枚方郡役所」が設置され、交野郡、讃良郡とともに管轄されました。その後、「茨田交野讃良郡役所」と改称しています。

明治14年には大阪府の管轄に移り、明治22年（1889年）には町村制が施行されました。この際に、現在の交野市や枚方市、寝屋川市の一部にあたる複数の村が成立しました。

明治29年（1896年）4月1日、郡制の施行により、茨田[[郡]]、交野郡、讃良郡の区域を合わせて北河内郡が成立し、交野郡は廃止されました。交野郡の歴史は、ここに幕を閉じます。

まとめ

交野郡は、古代から近世にかけて、歴史と地理、政治的変遷を複雑に織りなしてきた地域でした。貴族の狩場として栄え、桜の名所としても知られ、一方で複雑な行政区分変遷を経ています。これらの歴史的背景を知ることは、現在の大阪府東部の地域理解を深める上で、非常に重要です。交野郡の消滅は、明治時代の郡制改革という大きな流れの中で起こった出来事ですが、その歴史は、今も地域に深く刻まれています。

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