堺県

堺県：明治維新期の地方行政と短命な県域の興亡

明治維新後、日本の行政区域は大きく変動しました。その中で、短期間ながらも存在感を示した地方行政組織の一つに「堺県」があります。本稿では、堺県の設立から廃止、そしてその歴史的背景や意義について詳細に解説します。

設立と初代知事小河一敏の積極的な県政

堺県は、明治元年（1868年）6月22日に、それまでの大阪府から分割される形で誕生しました。当初は、現在の大阪府南西部に位置する旧堺奉行所の管轄地域を主に含んでいましたが、その後、和泉国、河内国、そして大和国の一部までその管轄範囲を拡大していきました。

初代知事となった小河一敏は、強い儒教思想に基づいた「仁政」を理想とし、独自の県政を展開しました。大和川の治水工事には、自身の年俸の一部を拠出するなど積極的な姿勢を示し、県札の発行による経済活性化にも取り組みました。さらに、全国に先駆けて郷学校を再興し、近代教育の普及にも尽力しました。しかし、その積極的な姿勢は中央政府との対立を招き、明治3年（1870年）には免官されています。

積極的な県政と府県統合

小河の後を継いだ税所篤は、堺県令として、教育行政や産業振興に力を入れていました。県師範学校や医学校の設立、そして、浜寺公園などの公園開設は、近代日本の地方行政における先進的な取り組みと言えるでしょう。また、堺灯台の建造など港湾整備も進められ、紡績所やレンガ工場の建設など、産業振興にも注力しました。明治9年（1876年）には奈良県を編入し、さらにその勢力を拡大しました。

しかし、明治14年（1881年）、堺県は大阪府に編入され、廃止となりました。これは、廃[[藩置県]]後の行政区域整理の一環として行われたものでしたが、その背景には、大阪府の財政難や、地方行政の効率化という側面もあったと考えられています。当時、大阪府は狭小な面積であり、経済的な問題を抱えていました。堺県編入によって、大阪府の規模を拡大し、財政基盤を強化する狙いがあったと推測できます。

奈良県再設置運動と税所篤の再登板

堺県の廃止後、直ちに奈良県再設置運動が始まり、明治20年（1887年）には奈良県が再設置されました。そして、その初代県知事には、かつて堺県令を務めた税所篤が就任しています。この事実は、堺県が単なる行政上の統合ではなく、地域住民の意識や政治的思惑も複雑に絡み合った出来事であったことを示唆しています。

まとめ：短命ながら地域発展に貢献した堺県

堺県はわずか13年間の歴史しかありませんでしたが、初代知事小河一敏の積極的な政策、そして後任の税所篤による教育・産業振興策は、その地域の社会経済発展に貢献しました。その歴史は、明治維新期の地方行政の変遷、そして府県統合の複雑な背景を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。堺県の存在は、近代日本の地方行政史において、忘れ去られることのない重要な一ページです。

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