交響曲第1番 (ショスタコーヴィチ)

交響曲第1番 ヘ短調 作品10 (ショスタコーヴィチ)

ドミートリイ・ショスタコーヴィチがレニングラード音楽院の卒業制作として作曲した、記念すべき最初の交響曲。

概要

若きショスタコーヴィチが、その才能をいかんなく発揮し、国際的な評価を得るきっかけとなった作品。

作曲

1924年夏、クリミアでの療養後、音楽院卒業を控えたショスタコーヴィチは交響曲の作曲に着手。第2楽章のスケルツォは以前から取り組んでいたものの、指導教官シテインベルクから「グロテスクすぎる」と酷評され、草稿を破棄されるという苦難も経験。しかし、シテインベルクの指示で作曲は続行された。スケルツォ第2番 変ホ長調作品7は、当初この交響曲の第3楽章として構想されたもの。作曲は難航し、第4楽章はなかなか進まなかったが、最終的には集中的に書き上げられた。1925年6月にオーケストレーションを完了、7月1日に完成。

音楽院での卒業試験では、2台ピアノ版が披露され、指導教官グラズノフからは序奏部の斬新さを指摘され、和声の修正を求められる一幕も。ショスタコーヴィチはこれに反発し、本番直前に元の和声に戻したため、グラズノフを不快にさせたというエピソードも残る。

初演

1926年5月12日、ニコライ・マルコの指揮、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団によりレニングラードで初演。熱狂的な支持を受け、第2楽章がアンコールされるほどの成功を収めた。

この成功により、ショスタコーヴィチは「現代のモーツァルト」と称えられ、国際的な名声を確立。ブルーノ・ワルターをはじめとする著名な指揮者や作曲家からも賞賛され、国外でも演奏されるようになった。

楽器編成

木管楽器: フルート2（ピッコロ1持ち替え）、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2
金管楽器: ホルン4、トランペット2、アルト・トランペット1、トロンボーン3、テューバ1
打楽器: ティンパニ、トライアングル、小太鼓、大太鼓、シンバル、タムタム、ベル
その他: ピアノ、弦五部

構成

古典的な形式に倣った4楽章構成。

1. 第1楽章 アレグレット - アレグロ・ノン・トロッポ（ヘ短調）
弱音器を付けたトランペットとファゴットによる序奏が印象的。行進曲風の第1主題とワルツ風の第2主題からなる。
2. 第2楽章 アレグロ - メノ・モッソ（イ短調）
スケルツォ。ユーモラスな主題とトリオが特徴。ピアノが活躍する。
3. 第3楽章 レント（変ニ長調）
三部形式の緩徐楽章。オーボエの旋律やチェロ独奏が美しい。
4. 第4楽章 レント - アレグロ・モルト（ヘ短調〜ヘ長調）
バスの三連音と木管楽器による序奏。第1楽章の主題と関連する第1主題が展開され、クライマックスを迎える。ティンパニの独奏を経て、華々しく終結。

全体として、ストラヴィンスキー、ベルク、シェーンベルク、チャイコフスキー、マーラーなど、様々な作曲家の影響が見られる。特に前半2楽章は、機械的な人間や操り人形のようなイメージが反映されている。ピアノが重要な役割を担い、協奏曲的な要素も含まれている。演奏時間は約30分。

脚注

注釈

出典

参考資料

『作曲家別名曲解説ライブラリー15 ショスタコーヴィチ』音楽之友社,1997年
『ショスタコーヴィチ ある生涯』アルファベータ,ローレル・E・ファーイ著,2005年
『作曲家・人と作品シリーズ ショスタコーヴィチ』 音楽之友社,千葉潤 著,2005年
『ショスタコーヴィチ:交響曲第1番 ポケット・スコア』全音楽譜出版社
* 『ショスタコーヴィチ:交響曲全集』解説書（ベルナルト・ハイティンク指揮,デッカ・レコード　エリアフ・インバル指揮,DENON）

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