交響曲第10番 (ショスタコーヴィチ)

交響曲第10番ホ短調 作品93について

ドミートリイ・ショスタコーヴィチの『交響曲第10番ホ短調 作品93』は、1953年に作曲された、彼の交響曲の中でも特に評価が高い作品です。この曲は、15曲ある交響曲の中でも傑作とされ、特に作曲者自身のイニシャルから由来する「DSCH音型」が重要な役割を果たしています。この音型は、作曲者の証言によれば、スターリンの音楽的肖像を表すものであり、曲の進行に伴ってその影響が顕著に現れます。

作曲の背景

ショスタコーヴィチは1948年にジダーノフ批判を受け、厳しい状況に置かれました。当時、スターリンは重厚な作品を期待していましたが、ショスタコーヴィチの交響曲第9番は軽快であったため、激怒されてしまいました。これ以降、彼は映画音楽等を作りながら、当局への迎合が求められました。この交響曲第10番は、スターリンの死の直後に発表されたことから、自由を求める試みとしての意義を持つとも考えられています。実際、作曲は短期間で行われたと言われていますが、一部では未完成の作品の旋律が含まれていることから、事情により発表が遅れた可能性も指摘されています。

初演と評価

この作品の初演は、1953年12月17日にエフゲニー・ムラヴィンスキーの指揮によって行われました。初演後、この交響曲に対する評価は賛否があり、ソビエトの音楽界では3日間にわたる討論会が開かれるなど、意見が分かれました。ショスタコーヴィチ自身は当作品に対し「欠点はあるが愛おしいものだ」と述べる余裕を見せています。

また、アメリカにおいても初演権の争いがあったほど、この作品には注目が集まりました。カラヤンは、この作品が自身のリズムに合うと感じ、1969年にはソビエトで演奏しました。この際、ショスタコーヴィチはその演奏を「最も美しい」と評価したとされていますが、本当に褒め言葉であったかは定かではありません。

作品の構成と解釈

交響曲第10番は4つの楽章から構成され、演奏時間は約50分です。楽章は以下のように分類されます：

• - 第1楽章：Moderato（ホ短調）
• - 第2楽章：Allegro（変ロ短調）
• - 第3楽章：Allegretto（ハ短調）
• - 第4楽章：Andante - Allegro（ロ短調 - ホ長調）

第1楽章は暗示的な音によって始まり、DSCH音型が徐々に現れていきます。第2楽章は音楽的にスターリンを描いたとされ、異常な速度感で進むスケルツォ的な性格を持っています。第3楽章は不気味な雰囲気から始まり、DSCH音型がほんのりと潜んでいます。最後の第4楽章には力強い明るさが込められ、要所でDSCH音型が際立って響きます。

様々な解釈がなされる中、ショスタコーヴィチ自身はこの交響曲を「人間的な感情と情熱を描くこと」だと語っています。その一方で、『ショスタコーヴィチの証言』の中では、スターリンの影響が色濃く残っているとの見解も示されています。音楽評論家からは、リストの『ファウスト交響曲』との関連性が指摘されるなど、豊かな解釈が展開されています。

結論

ショスタコーヴィチの交響曲第10番は、彼の人生や時代背景を反映した作品であり、深い意味を持っています。音楽的な表現を通じて、自身の感情や社会へのメッセージを巧みに表現しており、そのことで聴く者に強い印象を与え続けています。

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