交響曲第2番 (シューマン)

ロベルト・シューマン 交響曲第2番 ハ長調 作品61

ロベルト・シューマンの交響曲第2番ハ長調作品61は、1845年から1846年にかけて作曲され、1846年11月5日にフェリックス・メンデルスゾーン指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演されました。完成された交響曲としては実質的に3番目にあたりますが、2番目の作品が後に改訂され「第4番」として出版されたため、出版順序上、第2番となりました。この作品はスウェーデン国王オスカル1世に献呈され、演奏時間は約38分です。

作曲の経緯としては、シューマンがライプツィヒ音楽院で教鞭を執っていた時期に精神的な不調に悩まされ、1844年に辞任しドレスデンへ移住したことが背景にあります。ドレスデンでは、リヒャルト・ワーグナーやフェルディナント・ヒラーらと交流し、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの研究に再び取り組みましたが、病状はなかなか好転しませんでした。1845年7月にピアノ協奏曲イ短調を完成させた後、9月にはメンデルスゾーンに宛てた手紙で「ハ長調のトランペットが頭に響いている」と述べており、この頃から交響曲の作曲に着手したと考えられています。12月にはスケッチが完了し、翌1846年にオーケストレーションが完成しました。シューマンの交響曲は比較的短期間で作曲されることが多いのですが、この第2番は作曲に比較的長い期間を要しています。

楽器編成は、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部で構成されています。

楽曲構成

第1楽章: Sostenuto assai - Allegro ma non troppo

ハ長調。序奏付きのソナタ形式（提示部反復指定あり）。6/4拍子の序奏は49小節からなり、弦楽器の穏やかな動きに乗せて、トランペットが特徴的な5度跳躍の動機を提示します。この動機は全曲を通して現れる統一動機としての役割を果たします。第1主題の動機を予感させながら緊張感を高め、落ち着きを取り戻したところで、3/4拍子の主部に入ります。第1主題は序奏で示された動機を反復した軽快なもの。第2主題は明確には現れず、第1主題から派生した音階の上昇・下降が用いられています。コデッタも第1主題のリズムから派生しています。展開部では序奏の穏やかな音型も現れ、シューマン自身が語ったように、闘争的な雰囲気の中で特定の音型やリズムが繰り返し現れます。前半は推移部の素材や第2主題が中心に扱われ、後半では第1主題も現れてクライマックスを形成します。再現部では第1主題がより強調され、その後は形式通りに進行します。コーダでは序奏のトランペット動機が再び現れます。

第2楽章: Scherzo. Allegro vivace

ハ長調。2/4拍子。2つのトリオを持つA-B-A-C-A-Codaのスケルツォ。弦楽器によるスケルツォ主題は同一音型の反復が多く、目まぐるしい印象を与えます。第1の中間部はト長調で、3連符を用いた穏やかな旋律が奏でられます。第2の中間部は穏やかでありながらも推進力を持っています。コーダでは、トランペットによって統一動機が現れます。

第3楽章: Adagio espressivo

ハ短調。2/4拍子。A-B-A-C-A-B-A-Codaのロンド形式。主部では、ヴァイオリンが半音階的な、愁いを帯びた旋律を奏で、それを各楽器が受け継いでいきます。第1副主題(B)は、ホルンの分散和音風の音形と、木管楽器の音階的な反復音形から構成されています。第2副主題(C)は、弦楽器のスタッカートとシンコペーションが特徴的ですが、エピソード的な扱いで短くまとめられています。

第4楽章: Allegro molto vivace

ハ長調。2/2拍子。展開部を欠いたソナタ形式に、長大なコーダが付随した自由な形式。牽引力のある短い前奏に続き、躍動的な第1主題が現れます。第2主題は、第3楽章の旋律に基づいています。すぐに第1主題が再現されますが、前奏の動機が展開され、第2主題の反行形に続いて統一動機が現れます。曲は一時的にハ短調に収束し、静まります。そこから木管楽器が新しい主題を提示し、コーダが始まります。コーダは非常に長く、第2部とも言えるほどの規模を持っています。音楽は徐々に力を取り戻し、新しい主題が賛歌のように歌い継がれ、前奏の動機を繰り返して高揚していきます。コーダの主題と統一動機が掛け合いのように進行し、壮麗さを増し、ティンパニの連打を経て輝かしく終結します。

シューマンの交響曲第2番は、彼の内面の葛藤や苦悩を反映しながらも、それを乗り越えようとする力強い意志が感じられる作品です。統一動機の効果的な使用や、各楽章の構成など、作曲技法も優れており、聴く者を魅了する要素が詰まっています。

日本初演は1963年3月29日、東京文化会館にてM.ル・ルー指揮、日本フィルハーモニー交響楽団によって行われました。シューマンの交響曲の中では最も遅い日本初演でしたが、現在では広く親しまれるレパートリーとなっています。

オーケストレーションの変更・改訂

シューマンの他の交響曲と同様に、かつては様々な指揮者がオーケストレーションの変更を試みていました。中でもマーラーによる変更は最も大胆で、終楽章のコーダを大幅にカットしています。マーラー版の録音は、チェッカート、シャイー（ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団との新盤）、スダーンなどが存在します。トスカニーニも終楽章のカットは採用しませんでしたが、マーラー版のオーケストレーションを多く取り入れています。レヴァインの録音（ベルリン・フィルとの新盤）がマーラー版として販売されたことがありますが、実際にはほぼ原典版通りの演奏です。

交響曲第2番作品61の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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