交響曲第2番 (バラキレフ)

交響曲第2番 ニ短調：ミリイ・バラキレフの魂の叫び

ミリイ・バラキレフによって1908年に完成された交響曲第2番ニ短調は、作曲者の晩年の苦悩と音楽への情熱が色濃く反映された作品です。約35分の演奏時間の中に、バラキレフならではのロシア的な旋律と、壮大なオーケストレーションが織り込まれ、聴く者を魅了します。

作曲の背景

19世紀後半、バラキレフはかつて率いた「力強い仲間たち」の時代から一転、音楽界での影響力を失い、不遇の時代を迎えていました。かつての彼の地位は、弟子のリムスキー＝コルサコフが引き継ぎ、若い世代の作曲家たちはバラキレフを過去の遺物と見なすようになっていました。しかし、彼は失意の中にあっても、過去の作品の改訂や未完作品の完成に情熱を注ぎ続けました。

交響曲第2番は、交響曲第1番の初演後まもなくの1900年に着手されましたが、他の作品と同様に完成までに長い年月を要しました。バラキレフが1908年2月19日にカルヴォコレッシに宛てた手紙によれば、最初の3楽章はオーケストレーションが完了していたものの、終楽章は未完成で、完成にはまだ時間がかかるとのことでした。その後、約5ヶ月後の7月5日にようやく完成し、翌年には出版、初演されました。初演は1909年4月23日、サンクトペテルブルクの無料音楽学校演奏会にて、弟子のセルゲイ・リャプノフの指揮で行われました。

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器編成で構成されています。

木管楽器: フルート3（うち1はピッコロ持ち替え）、オーボエ、コーラングレ、クラリネット3、ファゴット2
金管楽器: ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ
打楽器: ティンパニ、トライアングル、タンバリン、スネアドラム、シンバル、バスドラム
その他: ハープ
弦楽器: 弦五部

楽曲構成

交響曲第2番は、以下の4つの楽章で構成されています。

第1楽章: Allegro ma non troppo
3/4拍子のソナタ形式。印象的な和音で始まり、クラリネットとチェロによって第1主題が奏でられます。その後、スネアドラムの東洋的なリズムに乗せて、オーボエが第2主題を提示します。展開部、再現部を経て、両主題を用いたコーダで締めくくられます。

第2楽章: Scherzo alla Cosacca: Allegro non troppo, ma con fuoco ed energico
三部形式。「コサック風スケルツォ」と題され、元々は交響曲第1番のために作曲されたものです。打楽器の一撃の後、コーラングレとオーボエが行進曲風の主題を奏で、発展していきます。トリオの主題には、リムスキー＝コルサコフの「100のロシア民謡集」から採られたロシア民謡「雪が溶ける」が用いられています。

第3楽章: Romanza: Andante
「ロマンツァ」の副題を持つ緩徐楽章。クラリネットによって甘美なメロディが奏でられ、発展していきます。全奏を経た後、フルートとコーラングレによって第2主題が提示されます。これは第4楽章の第3主題と関連しています。再び第1主題が回帰し、クラリネットやフルートのソロを経て、コラールのように穏やかに歌われた後、主和音で静かに終わります。

第4楽章: Finale: Tempo di Polacca
トランペットによるファンファーレで始まる、ポロネーズのリズムによる終楽章。第1主題が数回奏でられた後、スネアドラムのポロネーズのリズムに乗せて、コーラングレが第2主題を演奏します。この主題もリムスキー＝コルサコフの「100のロシア民謡集」から採られたロシア民謡「我等の庭にある」が用いられています。これらの主題が様々に展開された後、中間部の第3主題がヴァイオリンによって甘美に提示されます。最後に、これらの主題が様々な形で展開され、ロシアの交響曲らしく高らかに終結します。

交響曲第2番は、バラキレフの音楽的遺産の中でも重要な作品の一つであり、彼の内面の葛藤と、ロシア音楽への深い愛情が込められています。この作品を聴くことで、バラキレフの魂の叫びを感じ取ることができるでしょう。

参考文献

Höflich社スコア（Study Score 321）
フランシス・マース（森田稔・梅津紀雄・中田朱美　訳）「ロシア音楽史」（2006年　春秋社）ISBN 4393930193

外部リンク

交響曲第2番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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