交響曲第2番 (ブルックナー)

アントン・ブルックナー 交響曲第2番 ハ短調

アントン・ブルックナーの交響曲第2番ハ短調は、1872年に最初の稿が完成した作品で、彼が番号を与えた2番目の交響曲です。この作品は、ブルックナーがウィーンで音楽家としての地位を確立していく過程で作曲されました。

作曲の経緯

1868年、44歳のブルックナーはウィーンに移り、ウィーン音楽院で教鞭を執る傍ら、ウィーン宮廷礼拝堂のオルガン奏者としても活動しました。それ以前には、リンツ大聖堂とリンツ市立聖堂のオルガン奏者を兼任していました。1869年にはナンシー、パリへと旅行し、パリでのオルガン演奏会ではサン＝サーンスやフランクから絶賛を受けました。自信を得たブルックナーは、1871年にロンドンでオルガン・コンクールに出場し、見事第1位を獲得。その後、1871年10月11日に交響曲第2番の作曲を開始しました。

ブルックナーは交響曲第1番の後、1869年にニ短調の交響曲を作曲し、当初はこの作品に「第2番」の番号を与えるつもりでしたが、出来栄えに満足できず、この作品を封印しました（現在、このニ短調の曲は「交響曲第0番」と呼ばれています）。

1872年に初稿が完成しましたが、初演は難航しました。指揮者デッソフが初演を計画したものの、オーケストラ団員から演奏不可能との意見が出たため中止となりました。デッソフ自身も第2交響曲に対する十分な理解や共感を得られなかったことも理由の一つでした。翌1873年に改訂がなされ、同年10月26日にブルックナー自身の指揮でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団により初演されました。その後も、1876年、1877年、1891年から1892年にかけて、細部の改訂が重ねられました。

初演と演奏時間

世界初演は1873年10月26日、ブルックナー自身の指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって行われました。演奏会は、前半がブルックナーのオルガン独奏（バッハの『トッカータとフーガ ニ短調』、即興演奏）、後半が交響曲第2番の初演という構成でした。
日本初演は1974年、ペーター・シュヴァルツ指揮の札幌交響楽団によって行われました。

演奏時間は、初稿が約70分、第2稿が約60分です。

楽器編成

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽器（ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

出版の経緯

1892年にドブリンガー社から初版が出版されました。この版は、1892年までの改訂に弟子の校訂が加わったものと言われています。その後、国際ブルックナー協会の原典版編纂により、1938年にハース版が出版されましたが、このハース版は1877年稿をベースに一部1872年稿を採用したもので、レオポルト・ノヴァークから批判を受けました。

ノヴァークが校訂作業を引き継いだ後、1965年に1877年稿に基づくノヴァーク版が出版されました。その後、ウィリアム・キャラガンが校訂を引き継ぎ、1872年稿・1873年稿を校訂するとともに、1877年稿を再校訂しました。2005年には国際ブルックナー協会から1872年稿が出版され、「第1稿」と呼称されるようになりました。

楽曲解説

第1楽章 Moderato

ハ短調、4分の4拍子。ソナタ形式。ヴァイオリン、ヴィオラのトレモロの中から、チェロが第1主題を奏でます。トランペットの信号風リズムが現れ、第2主題は変ホ長調で提示されます。展開部は主に第1主題を扱い、再現部では各主題が再現されます。コーダは長大で、第1主題の断片が繰り返されます。

第2楽章 Andante

変イ長調、4分の4拍子、ロンド形式。法悦的な音楽で、後の長大なアダージョの萌芽が見られます。ミサ曲第3番ヘ短調のベネディクトゥスが引用されます。

第3楽章 Scherzo

ハ短調、3分の4拍子。三部形式。粗野なスケルツォで、ブルックナーの原始的な性格が反映されています。トリオはハ長調で、レントラー風です。

第4楽章 Finale

ハ短調～ハ長調、2分の2拍子。ソナタ形式。ヴァイオリンの細かい動きで始まり、第1主題が示されます。ヘ短調ミサ曲からは「キリエ」が引用されます。コーダではハ長調に転じて全曲を明るく締めくくります。

備考

ブルックナーはワーグナーに交響曲第3番とこの第2番の譜面を提示し、どちらかを献呈したいと申し出ましたが、ワーグナーは第3番に興味を示しました。また、ウィーン・フィルへの献呈も拒絶され、フランツ・リストへの献呈も果たせませんでした。

この曲は、全休止が多いことから「休止交響曲」の俗称で呼ばれることもあります。また、自作の「ミサ曲ヘ短調」から主題が引用された箇所があるため「ミサ交響曲」とも呼ばれます。

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