交響曲第23番 (ハイドン)

交響曲第23番 ト長調 Hob. I:23

フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1764年に作曲した交響曲です。この年は、自筆譜が現存する第21番から第24番までの4つの交響曲が書かれたことが判明しており、本作はその中の一曲にあたります。楽器編成や楽章構成は当時の交響曲として比較的標準的ながら、楽章の随所にハイドンならではの独自の工夫が凝らされている点が大きな特徴です。特に、第3楽章のメヌエットにおけるカノン技法や、終楽章の意外な終結部などに、その個性が強く表れています。

編成

この交響曲は、以下の楽器で演奏されます。

• - オーボエ2
• - ホルン2
• - 第1ヴァイオリン
• - 第2ヴァイオリン
• - ヴィオラ
• - 低音（チェロ、ファゴット、コントラバス）

低音パートはチェロ、ファゴット、コントラバスによって奏されます。

楽曲構成

全4楽章で構成されており、標準的な演奏時間は約20分です。

第1楽章 アレグロ

ト長調、4分の3拍子、ソナタ形式。活気に満ちた楽章で、3小節を単位とした主題が用いられています。対位法的な技法が巧みに活用されており、楽曲に立体感を与えています。冒頭の主題から、終盤の軍隊信号を思わせるパッセージに至るまで、ホルンの響きが印象的な役割を果たします。

第2楽章 アンダンテ

ハ長調、4分の2拍子、ソナタ形式。この楽章は弦楽器のみで演奏されます。低音パートが絶えず奏でる3連符や、32分音符による装飾的なパッセージが特徴的で、抒情的な旋律に動きと彩りを添えています。

第3楽章 メヌエット - トリオ

メヌエット部はト長調、トリオ部はハ長調、4分の3拍子。メヌエットでは、高音パートと低音パートが旋律を1小節遅れで追いかける厳格なカノン技法が用いられています。トリオはハ長調に移り、第2楽章と同様に弦楽器のみで演奏されます。ここでは、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、低音の3つの声部が、2小節遅れで互いを追う3声のカノンを形成しています。この楽章のカノン技法は、ウィーンで本作を聴いたヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトに大きな影響を与えました。モーツァルトは自身の『カッサシオン第1番 ト長調 K. 63』の第4楽章メヌエットに、ハイドンと同様のカノン構造を採用しています。その後もモーツァルトは対位法的な手法を用いた特徴的なメヌエットを数多く生み出し、後にハイドンに献呈した『ハイドン・セット』に含まれる『弦楽四重奏曲第18番 イ長調 K. 464』の第2楽章メヌエットでは、対位法的メヌエットの到達点とも評される傑作を生み出しています。

第4楽章 フィナーレ：プレスト・アッサイ

ト長調、8分の6拍子、ソナタ形式。この楽章は、全楽器による極めて力強い和音の連続（fff）と、弦楽器のみによる繊細で細かく跳ねるような音型（pp）という、鮮やかな音響的対比によって展開されます。激しさと静けさの交代が、楽曲に推進力と面白みを与えています。結びの部分は弱音（pp）となり、最後は弦楽器のピッツィカートによって、あたかも消え入るかのように静かに幕を閉じます。

参考文献

• - 『ハイドン 交響曲集II（13-27番） OGT 1590』音楽之友社、1981年。（ミニスコア、H.C.ロビンス・ランドンによる序文）

外部リンク

• - 交響曲第23番 ト長調 Hob. I:23の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト (IMSLP)

もう一度検索