交響曲第3番 (ハチャトゥリアン)

交響曲第3番ハ長調「シンフォニー・ポエム」作品67

アラム・ハチャトゥリアン（1903-1978）は、ソビエト連邦を代表する作曲家の一人です。彼が1947年に完成させた交響曲第3番ハ長調 作品67は、「シンフォニー・ポエム」という副題を持つ単一楽章の管弦楽曲であり、およそ25分程度で演奏されます。この作品は、当時のロシア革命30周年という記念すべき年に捧げる形で作曲されました。

楽曲の初演は、作曲された年の1947年12月13日に行われました。指揮台に立ったのは、ロシアの巨匠エフゲニー・ムラヴィンスキーであり、演奏はレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団が担当しました。壮大なスケールを持つこの作品は、初演時から大きな注目を集めました。

楽曲の構成と特徴

この交響曲は、形式的には単一楽章という比較的珍しい構造をとっています。しかし、その内部は明確なセクションに分かれており、Allegro moderato, maestosoで開始され、Allegro、Andante sostenutoを経て、再びMaestoso、そしてTempo Iに戻るという流れを辿ります。これは、あたかも一つの壮大な物語が展開されるかのようです。

楽曲の開始は特に印象的です。タムタムの神秘的なロールと、弦楽器が奏でる持続的なH音の上に、輝かしいトランペットのファンファーレが響き渡り、聴く者を一瞬にして作品の世界へと引き込みます。これに続いて登場するのがオルガンのトッカータ（独奏）です。このオルガンパートは非常に長く、技巧的にも極めて高度な内容を含んでいます。その難しさから、実際の演奏においてはしばしば短縮されたり、省略されたりする傾向があります。オルガンのソロに、トランペットがさらに加わり、緊張感のある対話が繰り広げられます。

激しい展開が一段落すると、音楽は静けさを取り戻し、弦楽器によって民族的な情緒漂う旋律が奏でられます。これは、ハチャトゥリアンらしい東洋的な響きを持つメロディーであり、作品に深みを与えています。しかし、静寂は長く続かず、最後は再び金管楽器群による圧倒的かつ暴力的な響きによって、劇的に幕を閉じます。このクライマックスは、聴衆に強烈な印象を残します。

楽器編成と逸話

本作は、その音楽的な内容と同様に、使用される楽器編成においても特筆すべき点があります。一般的なオーケストラ編成に加えて、多数の打楽器、ハープ、そしてオルガンが含まれています。さらに特徴的なのは、オーケストラ全体のトランペット群とは別に、15本ものソロ・トランペットがスコアに指定されている点です。これらのソロ・トランペットは、楽曲冒頭やクライマックスなど、作品の重要な場面で強烈な効果を発揮します。

具体的には、ピッコロ1、フルート2、オーボート2、コーラングレ1、クラリネット2（B♭管）、ファゴット2、ホルン4（F管）、トランペット3（B♭管）、トロンボーン3、チューバ1、そしてティンパニ、スネア・ドラム、シンバル、大太鼓、タムタムといった多数の打楽器、ハープ、弦五部という標準的な編成に加えて、オルガンと異例の数のソロ・トランペット15が加わるという、極めて大規模かつ特殊な構成となっています。

このような巨大な楽器編成は、演奏場所を選ぶだけでなく、多くの演奏家を必要とすることから、当時のソビエト共産党の一部からは、地方での演奏が困難であるとして批判を受けたという逸話も残されています。これは、当時の社会情勢や芸術に対する考え方を垣間見せる興味深いエピソードと言えるでしょう。

まとめ

ハチャトゥリアンの交響曲第3番「シンフォニー・ポエム」は、ロシア革命30周年という歴史的な背景を持ち、大規模な編成、オルガンやソロ・トランペットを含む独創的な音響、そして単一楽章の中に凝縮された劇的な構成が特徴の作品です。ハチャトゥリアンの情熱的で力強い音楽語法が遺憾なく発揮されており、聴く者に強烈な印象を与える一曲と言えるでしょう。

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