交響曲第3番 (マデトヤ)

交響曲第3番 イ長調 作品55

レーヴィ・マデトヤが1925年から1926年にかけて作曲した、イ長調の交響曲（作品55）は、未完・散逸となった第4番を除くマデトヤにとって最後の完成された交響曲となりました。発表当時は聴衆や評論家から十分に理解されず、その価値が見過ごされがちでしたが、時を経た現在では、フィンランドの偉大な作曲家ジャン・シベリウスの交響曲群と並び称される傑作として、国際的に高く評価されています。

作曲の背景と初演

マデトヤは、オペラ『オストロボスニアの人々』の大成功を収めた後、新たな創作への意欲を胸にフランスへと渡りました。彼はパリ近郊の静かな村、ウイユに約半年間滞在し、そこでこの第3交響曲の作曲に着手しました。経済的な理由から同年10月にはフィンランドへ帰国しましたが、創作活動は継続され、交響曲は完成に至ります。

作品の初演は1926年4月8日、ヘルシンキにおいて作曲者自身の指揮によって行われました。この時、マデトヤはいつものように喝采を浴びましたが、聴衆も評論家も、この新しい交響曲に対して困惑の色を示しました。彼らは、前作である記念碑的で哀調を帯びた第2交響曲のような作風を期待していたため、第3交響曲が持つ楽観的で抑制された調子に驚き、その音楽的な重要性をほとんど認識しなかったのです。

評価の変遷

初演時の期待外れという評価は、後にフランスの音楽学者アンリ＝クロード・ファンタピエによって分析されています。彼はこの陽気で田園的な性格を持つ交響曲を「シンフォニア・ガリカ」（ガリア風のシンフォニー）と評し、初演時の反応について、「聴衆はオペラ『オストロボスニアの人々』に続く作品として愛国的な要素の強い音楽を期待していたが、実際に聞こえてきた音楽が彼らにとって難解であり、さらに彼らが求める華やかさや荘厳さを欠いていたことに失望したのである」と説明しました。この分析は、当時のフィンランドにおける音楽に対する特定の期待があったことを示唆しています。

しかし、年月が経過するにつれて、この作品に対する理解は深まりました。かつては聴衆を戸惑わせた楽観性や洗練されたスタイルが、マデトヤ独自の個性の表れとして再評価されるようになったのです。今日、交響曲第3番はマデトヤの「傑作」の一つと見なされており、フィンランド交響曲史において、シベリウスの偉大な7つの交響曲に比肩し得る数少ない作品として、その地位を確立しています。

楽曲構成

この交響曲は、典型的な4楽章構成で書かれており、全曲の演奏時間は約31分です。

第1楽章 Andantino - Allegretto
ソナタ形式で構成され、冒頭のアンダンティーノからティンパニの一撃を合図にアレグレットの主部へ移行します。楽章全体を通して、モチーフの巧妙な扱いやカノン、主題の拡大といった対位法的な技法が駆使されています。最後は再びテンポがアンダンティーノに戻り、静かに閉じられます。

第2楽章 Adagio
低弦と木管楽器が刻むオスティナートの上で、ヴァイオリンが穏やかな主題を奏でて始まります。一度大きなクライマックスを迎えますが、その後勢いは落ち着き、静かで牧歌的なカノンへと導かれます。このカノンは低弦から始まり、ヴァイオリンが加わって発展します。冒頭の主題が回帰した後、再び高揚した瞬間を作り出し、最後は弱音で静かに幕を下ろします。

第3楽章 Allegro non troppo
スキのないスケルツォ楽章であり、音楽学者のエルッキ・サルメンハーラは特にこの楽章と終楽章にマデトヤの個性が最も強く表れていると指摘しています。ティンパニの連打で力強く開始され、スタッカートを伴う第1主題、田園的な雰囲気を持つ第2主題、そして半音階的な動きが特徴の第3主題が次々と提示されます。これらの主題は様々に展開された後、それぞれ再現され、最終的にはティンパニと弦楽器のピッツィカートによって活気をもって締めくくられます。

第4楽章 Pesante, tempo moderato - Allegretto
冒頭のPesante、tempo moderatoの序奏部では、ホルンによって荘厳な主題が提示されます。この主題はシューベルトの交響曲「大ハ長調」の冒頭主題を想起させると言われます。序奏部は次第に祝祭的な雰囲気を帯び、アレグレットの主部に入ると流麗で歌謡的な主題が奏でられます。楽章の終盤には序奏部の主題が堂々と回帰し、全曲をまとめますが、そのまま勢いを減じて終止符が打たれるという、独特の結び方で幕を閉じます。

かつては同時代の聴衆にその真価を理解されなかった本作ですが、今日ではマデトヤ円熟期の到達点として、またフィンランド音楽史における重要な遺産として、広く認識され愛されています。

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