交響曲第4番 (チャイコフスキー)

チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調 作品36

チャイコフスキーの交響曲第4番は、1877年から1878年にかけて作曲された、彼の後期を代表する交響曲の一つです。この作品は、作曲当時のチャイコフスキーの私生活における大きな出来事、特に結婚生活の破綻と、メック夫人からの経済的な援助という二つの対照的な要素が色濃く反映されています。

作曲の背景

1877年、チャイコフスキーはヴェネツィアのホテルでこの曲を構想しました。ホテルの壁面には、彼がこの地で交響曲第4番を作曲したという碑文が残されています。この時期、チャイコフスキーはアントニーナ・ミリューコヴァとの結婚という、非常に個人的な問題を抱えていました。彼女からの熱烈な求婚を受け、肉体関係を持たないことを条件に結婚しましたが、この結婚はわずか80日で破綻しました。この結婚生活の混乱と並行して、メック夫人がパトロンとなったことで、チャイコフスキーは経済的な安定を得て作曲に専念できるようになったのです。本作は、メック夫人への感謝の意を込めて献呈されました。

曲の構成

交響曲第4番は、4つの楽章からなる古典的な構成をとっています。演奏時間は約42分です。

第1楽章：Andante sostenuto - Moderato con anima - Moderato assai, quasi Andante - Allegro vivo ヘ短調

序奏付きのソナタ形式で、比較的長い楽章です。冒頭のホルンとファゴットによるファンファーレは、全曲を支配する重要なモチーフです。このファンファーレは「運命のファンファーレ」とも呼ばれ、曲全体を通して何度も登場し、特に楽章の終結に向けて緊迫感を高めます。提示部では、暗く悲劇的な第1主題が弦楽器で提示され、木管楽器を中心に確保されます。その後、第2主題が木管楽器によっておどけた感じで提示されます。展開部では、第1主題とファンファーレが激しく展開され、クライマックスを迎えます。再現部では、提示部の主題が再び現れ、コーダでは第1主題とファンファーレが力強く奏でられ、楽章を締めくくります。

第2楽章：Andantino in modo di canzona - Più mosso 変ロ短調

「歌の様式によるアンダンティーノ」と題された三部形式の楽章です。オーボエによって奏される主要主題は、重々しく憂鬱な雰囲気を持っています。第2部は比較的明るい楽想となり、木管楽器が活躍します。第3部では、主要主題が弦楽器で再現され、フルートのオブリガートが加わります。最後は木管楽器による主要主題の断片が繰り返され、静かに終わります。

第3楽章：Scherzo: Pizzicato ostinato. Allegro - Meno mosso ヘ長調

弦楽器が終始ピチカートで演奏されるスケルツォです。スケルツォ本体はピチカートによる軽快な主題で構成され、中間部（トリオ）では木管楽器が活躍します。トリオでは、ピッコロを中心とした木管楽器の主題に続き、金管楽器による行進曲が現れます。最後は、スケルツォの主題が繰り返され、遠ざかるように終わります。

第4楽章：Finale: Allegro con fuoco ヘ長調

自由なロンド形式で、チャイコフスキーは、この楽章で示されているように、世の中には多くの素朴な人間の喜びがあることを表現しています。冒頭は突然トゥッティで開始され、聴衆に強いインパクトを与えます。第2副主題にはロシア民謡「白樺は野に立てり」が用いられています。この楽章は、喜びと力強さに満ちた、壮大なフィナーレを迎えます。

初演と評価

初演は1878年2月10日にサンクトペテルブルクで行われました。チャイコフスキーは、初演の成功を電報で知りましたが、初演後、タネーエフらからは、第1楽章が長すぎる、ファンファーレが標題音楽的であるといった批判を受けました。

しかし、この作品は今日ではチャイコフスキーの代表作として広く知られており、そのドラマチックな構成と、感情豊かな旋律は、多くの人々に愛されています。

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