交響曲第4番 (モートン・グールド)

モートン・グールド：交響曲第4番（ウェスト・ポイント交響曲）

モートン・グールド（Morton Gould, 1913-1996）が作曲した交響曲第4番は、吹奏楽という編成のために書かれた重要な作品です。スコアに記された正式な題名は『バンドのための交響曲』（Symphony for Band）と簡潔ですが、しばしば『ウェスト・ポイント交響曲』（West Point Symphony）の愛称で親しまれています。グールドは他にも1983年に「Centennial Symphony」という吹奏楽のための交響曲を手掛けています。

作品の背景

この交響曲は、アメリカ陸軍士官学校（ウェスト・ポイント）のフランシス・レスタ大尉からの依頼を受けて作曲されました。同学校の創立150周年を祝う記念事業の一環として委嘱されたもので、1952年4月13日に作曲者自身の指揮により初演されました。この記念すべき機会のために、他にも著名な作曲家による作品が書かれています。例えば、ダリウス・ミヨーの『ウェスト・ポイント組曲』（West Point Suite, 作品313）や、ロイ・ハリスの交響曲『ウェスト・ポイント』などが挙げられます。

音楽史上の位置づけ

グールドの吹奏楽作品の中でも特に重要な位置を占めるのが本作品です。作曲された当時、吹奏楽のためのオリジナルレパートリーはまだ発展途上にありましたが、そうした時期において比較的早く書かれた大規模作品の一つとして評価されています。パウル・ヒンデミットの交響曲変ロ調やヴィンセント・パーシケッティの交響曲第6番といった、吹奏楽史における初期の重要な大作群と並び称される存在です。音楽教育の分野で影響力を持つ書籍『吹奏楽演奏を通した音楽教育』（Teaching Music through Performance in Band）では、この作品について「旋律の創造性、巧みな音楽展開、独創的な視点、そして作曲技術の高さが、この作品を吹奏楽のための大規模作品の最上位に位置付けている」と高く評価しています。

構成

交響曲第4番は全2楽章で構成されており、全体を通して約20分の演奏時間を要します。

第1楽章 墓碑銘 (Epitaphs)

作曲者自身は、この楽章を「抒情的でありつつドラマティック」な性格を持ち、「全体的には悲しげな雰囲気」であると表現しています。楽章は木管楽器によるゆったりとした旋律で始まります。ここで提示される音楽的な動機は、作品全体を通して重要な役割を果たします。楽章の後半部分では、規則的な行進風のリズムに乗って、チューバが提示する主題に基づくパッサカリア（定旋律とその上での変奏を繰り返す形式）が壮大に展開されます。

第2楽章 行進曲 (Marches)

グールドはこの楽章を「力強く、陽気な性格」を持つと形容しています。様々な表情や特徴を持つ行進曲が次々と現れては通り過ぎていくような音楽が繰り広げられます。楽章の終盤には、ウェスト・ポイント士官学校の鼓笛隊（Fife and Drum Corps）を模倣したような音楽的な着想や、第1楽章の主要な旋律が再び姿を現します。最後は、軍隊のファンファーレや華やかな響きを思わせる急速なコーダによって力強く終結を迎えます。

この交響曲は、吹奏楽の可能性を広げた初期の重要な作品として、現在も多くの演奏機会を持っています。

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