交響曲第9番 (ヴィラ＝ロボス)

交響曲第9番（ヴィラ＝ロボス）

ブラジルの著名な作曲家であるエイトル・ヴィラ＝ロボスが1952年に手掛けた作品の一つに、彼の番号付き交響曲の第9番があります。ヴィラ＝ロボスは生涯を通じて多岐にわたるジャンルで膨大な数の作品を創作しましたが、交響曲もまた彼の創作活動における重要な柱の一つです。この第9番は、彼の創作活動が円熟期を迎えていた1950年代初頭の作品として位置づけられます。

作曲と初演

本作は1952年、ヴィラ＝ロボスの故郷であるブラジルの主要都市リオデジャネイロで作曲されました。完成後、この交響曲は速やかに世界に紹介される機会を得ます。その栄えある世界初演は、アメリカ合衆国において実現しました。指揮は高名なマエストロであるユージン・オーマンディが担当し、世界有数のオーケストラの一つであるフィラデルフィア管弦楽団の演奏によって、作品はその姿を初めて聴衆の前に現しました。この初演は、ヴィラ＝ロボスの国際的な名声を一層確固たるものとする出来事となりました。

献呈

この交響曲第9番は、作曲家が深い愛情を寄せた人物に捧げられています。献呈を受けたのは、アルミンタ・ネヴェス・ダウメイダ（Arminda Neves d'Almeida）という女性です。彼女は「ミンディーナ」という愛称で知られ、ヴィラ＝ロボスの晩年において、彼が世を去るまでの約23年間にわたり人生を共に歩んだ伴侶でした。この作品に込められた作曲家の個人的な思いが、献呈という形で示されています。

楽器編成

ヴィラ＝ロボスの交響曲第9番は、非常に充実した編成のオーケストラのために書かれています。色彩豊かで迫力のある響きを追求した作曲家の志向が反映された、大規模な楽器構成です。

使用される楽器は以下の通りです。

ピッコロ 1
フルート 2
オーボエ 2
コーラングレ 1
クラリネット 2
バスクラリネット 1
ファゴット 2
コントラファゴット 1
ホルン 4
トランペット 4
トロンボーン 4
チューバ 1
ティンパニ
打楽器群：タムタム、シンバル、ヤシの実の皮、バスドラム、シロフォン、ヴィブラフォン
チェレスタ 1
ハープ 1
* 弦五部

木管楽器、金管楽器ともに厚みがあり、特に打楽器にはティンパニに加え、多様な音色の楽器が指定されています。ヤシの実の皮のような民族的な響きを思わせる楽器が含まれている点は、ブラジル出身の作曲家ヴィラ＝ロボスらしさを感じさせます。チェレスタやハープも加わり、オーケストラ全体の響きに豊かな色彩とテクスチャが与えられています。

楽曲構成

この交響曲は、伝統的な西洋音楽の形式に基づき、全4つの楽章によって構成されています。各楽章は約20分という全体の演奏時間の中で、それぞれ異なる性格と速度をもって展開されます。典型的な交響曲の楽章配置を踏襲しており、速い楽章で始まり、緩やかな楽章、スケルツォ楽章を経て、再び速い楽章で締めくくられます。

各楽章のテンポ表示は以下の通りです。

1. Allegro: 速く活発なテンポの楽章です。
2. Adagio: ゆっくりとした、落ち着いたテンポの楽章です。
3. Scherzo (Vivace): 速く、生き生きとしたテンポを持つスケルツォ楽章です。多くの場合、軽快さやユーモラスな性格を持ちますが、力強い場合もあります。
4. Allegro (giusto): 再び速いテンポの楽章ですが、「giusto」（正確に、適切に）という指示が付されており、一定の規律を保った速度感を示唆しています。

これらの楽章を通じて、ヴィラ＝ロボスはこの大規模なオーケストラを駆使し、彼の音楽語法の特徴である豊かな旋律、力強いリズム、そして多様な音色パレットを展開していきます。約20分という演奏時間は、聴衆に濃密ながらもまとまりのある音楽体験を提供します。

この作品を含むヴィラ＝ロボスの交響曲については、ブラジル国内外で多くの研究が進められており、専門的な文献も複数出版されています。彼の膨大な作品群の中で、交響曲第9番は1950年代における彼の重要な創作の一例として位置づけられています。

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