交響的変奏曲 (フランク)

セザール・フランク「交響的変奏曲嬰ヘ短調」

セザール・フランクが1885年に作曲した「交響的変奏曲嬰ヘ短調」（Variations symphoniques pour piano et orchestre）は、ピアノと管弦楽のための変奏曲であり、演奏時間はおよそ17分です。1892年には、フランク自身によってピアノ二重奏版に編曲されています。

作曲の背景

フランクは初期に多くのピアノ作品を手がけ、ピアノ協奏曲も複数作曲しました。しかし、その後はピアノ曲から遠ざかり、晩年の1880年代になって再びピアノへの関心を取り戻します。この時期に、独奏曲「前奏曲、コラールとフーガ」や、ピアノと管弦楽のための交響詩「鬼神（ジン）」を作曲しており、「交響的変奏曲」はこれらの作品に続いて作曲されました。

初演と評価

1886年5月1日、パリの国民音楽協会の演奏会で、ルイ・ディエメの独奏、フランク自身の指揮によって初演されました。初演時の評価は、「拍手喝采で迎えられ、作者も喜びを隠さなかった」という肯定的な意見と、「演奏メンバーの水準の低さから酷評された」という否定的な意見の両方が存在します。

楽器編成

独奏ピアノ
フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
ティンパニ
弦五部

楽曲構成

楽曲は、主題提示部とそれに続く5つの変奏から構成されています。

主題呈示部
管弦楽による威圧的な導入の後、ピアノが優しく主題Aを奏でます。同じ動きが繰り返された後、ピアノで新しいメロディ（主題B）が提示されます。管弦楽とピアノが絡み合い、静まると、弦楽器のピッツィカートによる新しいメロディ（主題C）が登場します。その後、ピアノが分散和音で入り、主題Aを中心とした展開が行われます。
第1変奏
主題Aの前半が低音弦に現れ、ピアノが主題Bで応答します。主題Aの前半が管弦楽に広がると、ピアノは主題Aの後半と主題Cを順に展開します。
第2変奏
主題Cがピアノ、弦楽器、木管楽器によって展開されます。ヴィオラとチェロが主題Cを奏で、ピアノが装飾的に絡みます。次第に盛り上がり、管弦楽が主題A、続いて主題Cを奏で、ピアノが三連音符で応答し、クライマックスを迎えます。
第3変奏
ピアノが分散和音を奏でる中、チェロが主題C、続いて主題Aをゆっくりと歌います。ピアノのトリルに導かれ、ホルンと木管楽器が次の変奏のリズムを準備します。
第4変奏
主題Aを元にした軽妙な変奏です。
第5変奏
ピアノに陽気な新しい主題Dが現れます。主題Cが示された後、ピアノが伴奏なしにソロを繰り広げます。管弦楽が主題A、Cの順に奏で、ピアノと掛け合いを演じた後、嬰ヘ長調で力強く終結します。

演奏と普及

アルフレッド・コルトーによる録音が世界初録音です。その後、この作品は好んで演奏されましたが、CD時代に入ると急速に忘れ去られていきました。近年では、アルベルト・ノゼがロン・ティボー国際コンクールの本選で演奏し、名演と称えられましたが、二等賞に終わりました。21世紀の国際ピアノコンクールでは、本選でこの作品を選ぶ演奏家はほとんど見られなくなっています。

音楽評論家の片山杜秀は、フランク作品全体の演奏回数の低下について論じています。

参考文献

「最新名曲解説全集9 協奏曲II」（菅野浩和執筆、音楽之友社）
オイレンブルク版ポケットスコア（全音楽譜出版社）ISBN 4-11-894059-0
エマニュエル・ビュアンゾ：「フランク」（田辺保翻訳、音楽之友社、1971年）

外部リンク

* Variations Symphoniquesの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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