京口新地

京口新地と大正楼の歴史

概要

京口新地（きょうぐちしんち）は、かつて兵庫県丹波篠山市池上に存在した遊郭の一つです。この場所は、1908年に陸軍歩兵第七十連隊が篠山町に移転したのをきっかけに設置されました。京口新地は特に大正楼という遊郭で知られ、ここで過ごした阿部定の人生とその後の事件が注目を集めています。

大正楼は1930年に発行された『全国遊廓案内』によると、1958年に売春防止法が完全施行されるまでにその存在は消滅し、後に遊郭の名残を残していました。そして、大正楼は阿部定が遊女として最後に働いた場所として特に記憶されています。

大正楼の故事

大正楼での出来事は、阿部定という女性の生涯を象徴するものです。定は東京・神田に生まれ、若くして遊女としての人生を歩むこととなりました。1930年1月に26歳で大正楼に着き、そこで「おかる」という源氏名を名乗りました。彼女は大正楼での過酷な労働環境を「前よりも酷い」と語っており、その証言からは当時の遊女の生活の厳しさが伺えます。

定は過酷な環境から逃れるために何度も試みを繰り返しました。ある時、客と一緒に逃げ出したが、結局は連れ戻されてしまいました。しかし、彼女はこの後も逃亡を試み、ついには成功して神戸へと逃げ、娼妓としての生活を終えることができました。

阿部定の事件

阿部定は、その後1936年に愛人の男性を殺害するという衝撃的な事件を起こします。この事件は彼女を一躍有名にし、その後の人生に大きな影響を与えました。彼女は5月18日に男性を殺し、20日に逮捕され、懲役6年の判決を受けます。1941年には恩赦を受け、出所した後はバーなどの経営を行いましたが、1971年に失踪、以降の行方は不明となっています。

京口新地と大正楼の終焉

大正楼は2019年2月に丹波篠山市によって取り壊しが決定され、実際に取り壊されたのは3月6日でした。この取り壊しの際の費用は約470万円で、所有者に請求されました。大正楼の取り壊しは、京口新地の歴史に終止符を打つ重要な出来事となりました。

このように、京口新地と大正楼の歴史は、阿部定という一人の女性の物語と深く関わっています。彼女の生涯は遊郭という特殊な社会の中での悲劇を物語っており、遊女たちの過酷な運命を象徴するものでもあります。

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