京成バス長沼営業所

京成バス長沼営業所（けいせいバスながぬまえいぎょしょ）は、千葉県千葉市稲毛区長沼町に拠点を置く京成バスの一営業所です。千葉市（稲毛区、花見川区、美浜区）をはじめ、佐倉市、八千代市、四街道市といった周辺地域の路線網を担っています。かつては船橋市や習志野市にも路線を展開していました。営業所を示す社内記号は「N」が用いられ、ナンバープレートは「千葉」登録です。

この営業所の大きな特徴は、数多くの大規模団地や住宅地を結ぶ路線を管轄している点にあります。そのため、全長が長いバス車両が多く配置されていることも一つの特色です。過去には乗降をスムーズにするための3扉車両が多数在籍していましたが、1990年代後半以降は低床バスが導入されるようになり、新たな3扉車の投入はなく、現在は一般的な2扉のワンステップバスやノンステップバスが主力となっています。

営業所の歩み

長沼の地に初めてバスが運行されたのは古く、戦前の1933年（昭和8年）に千葉駅 - 穴川間を運行していた千葉市街自動車が長沼まで路線を延伸したのが始まりです。その後、戦時中の交通統合政策により、1944年に京成が同社を吸収合併し、路線を引き継ぎました。

長沼営業所の直接のルーツは、1969年（昭和44年）に千葉営業所から分離独立した草野車庫にあります。長沼営業所開設までの約20年間、京成は千葉営業所の管理の下、千葉市の北西部から八千代方面にかけて積極的に路線を拡大していきました。戦後、1950年代には千葉 - 長沼線が広尾を経て柏井橋経由で八千代方面へ延伸され、1954年には萱田線として城橋（現在の八千代市内）まで運行されるようになりました。また、1956年の横戸線（京成千葉駅 - 大和田駅）、1957年の八千代台線（京成千葉駅 - 八千代台駅）開通により、鉄道でのアクセスが不便だった千葉と八千代間の連携が強化されました。当時の千葉駅周辺では、京成千葉駅と国鉄千葉駅（現在の千葉市民会館付近）の間で、大和橋や県庁前を迂回するルートが採用されていましたが、これは当時の商業・行政の中心地へのアクセス確保という意図がありました。

住宅輸送の拡大と長沼営業所の設立

1950年代以降、千葉市郊外では軍事施設跡地や農地などが新しい住宅地として開発され始めました。市外へ向かう幹線路線と並行して市内路線の整備も進み、住宅地を経由する路線も開設されましたが、この頃の住宅地は既存の路線で対応できる規模でした。

しかし、1960年代半ばになると、戸数数千戸に及ぶような大規模団地の造成が特に都心への通勤に便利な千葉市西部で相次ぎました。これらの団地では、ラッシュ時の大量輸送に対応できる専用路線や、最寄り駅への直結ルートが求められるようになりました。こうした背景から、宮野木市営住宅への路線開設を皮切りに、千草台、あやめ台、勝田台、こてはし、さつきが丘、ファミールハイツといった大規模団地への輸送を目的とした路線が急速に拡充されました。京成団地への輸送は既存の黒砂線が延長されましたが、市街地側と分割され短縮される措置が取られました。このような大規模な住宅輸送網の拡大期に、それを担う拠点として1969年に長沼営業所が誕生しました。

管轄エリアの変遷

営業所開設後、数々の路線再編や千葉都市モノレール開業に伴う運行形態の見直しを経て、2000年にはかつて佐倉営業所の管轄だった花見川車庫を配下に加えました。これは、佐倉営業所本体が京成バスから分離し、子会社のちばグリーンバスへ移管されることになったためです。花見川車庫は佐倉市内の一部路線を担当していましたが、これらの路線は距離的に近い長沼営業所の管轄となりました。しかし、その後も佐倉市内の路線は採算性の問題や他路線との接続の孤立などから整理が進み、2012年には角栄団地線がちばグリーンバスに移管され、京成バスの佐倉市内一般路線は消滅しました。さらに、2012年末には花見川車庫が担当していた花見川団地線などが新設された習志野出張所へ移管され、花見川車庫はバスの折り返しや乗務員の休憩所としての機能のみを残すこととなりました。

現在の主な運行路線

長沼営業所は現在も多数の路線を運行しており、中でもあやめ台団地線やさつきが丘団地線は稲毛駅や新検見川駅と大規模団地を結ぶ利用者の多い主要路線です。あやめ台団地線には狭隘な区間を含む系統もあり、運転技術が求められます。また、検見川線や宮野木線のように、歴史の長い路線のルート変更や短縮を経て現在に至るものもあります。新興住宅地である瑞穂地区と新検見川駅を結ぶ瑞穂の杜線のように、特定の地域開発に合わせて開設された短距離路線もあります。これらの一般路線の中には、平和交通など他社路線と並行し、競争関係にある区間も存在します。

地域住民の交通利便性向上と福祉施設へのアクセス確保を目的に、千葉市花見川区北部ではコミュニティバス「花まわる号」（北部循環線）を運行しています。これは地域の意見を取り入れてルートが設定されたもので、京成バスが独自に運行を担っています。

高速バス・リムジンバス

都市間輸送を担う高速バス路線も管轄しています。都心への通勤・通学を支える「マイタウン・ダイレクトバス 千葉北ルート」は、長沼原町や草野車庫を起点に東京駅や東雲車庫を結んでいます。また、茨城県鹿島方面への「かしま号」や、千葉県南部へ向かう「アクアライン高速バス」、「アクシー号」の一部便を担当しています。空港連絡バスとしては、東京駅と成田空港を結ぶ「エアポートバス東京・成田」の一部の運行を担っています。さらに、幕張メッセでのイベント開催時には、横浜や東京駅への臨時直通バスも運行しています。

かつて管轄した路線

時代の変化や所管変更、路線の統廃合などにより、長沼営業所がかつて運行していた路線は多数あります。例えば、船橋方面と四街道方面を結んでいた四街道線、千葉駅方面と広尾を結んだ広尾線、勝田台駅からみ春野地区へのみ春野線、志津駅からの角栄団地線などは、後に他社や子会社に移管されたり、廃止されたりしました。また、西千葉駅と千草台団地を結んでいた千草台団地線は、2018年にちばシティバスへ移管され、これにより京成バス本体は西千葉駅発着の一般路線から撤退しました。八千代市のコミュニティバスの一部も過去に担当していましたが、現在は習志野出張所へ移管されています。

車両の構成

長沼営業所が保有する車両は、かつて草野車庫が日野自動車製、花見川車庫がいすゞ自動車製を主体としていた名残もあり、日野車が主力となっています。しかし、他営業所からの転属車両により、いすゞ車も一定数在籍しています。古い世代のワンステップバスも運用されていますが、近年はバリアフリー対応のノンステップバスの新車導入も進んでいます。過去に多数見られた3扉車は姿を消し、現在は2扉車が中心です。特筆される点として、一時コミュニティバス「花まわる号」専用として、他の京成バスとは異なる千葉中央バスカラーのいすゞ・ジャーニーJが配置されていた珍しい例がありました。高速バス用には日野・セレガなどの高速仕様車が配置されています。役目を終えた車両の一部は、関東鉄道や千葉内陸バス、ちばレインボーバスといった京成グループの会社に譲渡され、第二の活躍をしています。

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