京極高厚

京極高厚：豊岡藩最後の藩主の生涯

京極高厚は、但馬国豊岡藩の最後の藩主として、激動の幕末から明治へと続く時代を生き抜いた人物です。1829年、8代藩主京極高行の長男として江戸で生まれました。1847年、家督を相続すると、従五位下飛騨守に叙任され、豊岡藩の舵取りを担うこととなります。

若き藩主時代の高厚は、幕府要職を歴任しました。1849年には駿府加番、1851年には大坂加番に任じられ、政治の中枢で経験を積みます。翌年には、著名な儒学者・藤沢東畡を招いて『論語』の講義を受けるなど、学問にも励んでいました。

幕末の動乱期には、積極的な役割を果たしました。海防政策の一環として津居山港に御台場を築き、近代兵器を配備するなど、藩の防衛強化に尽力しました。1863年の生野の変では、幕府側に加わり、平野国臣や横田友次郎らの逮捕に貢献しています。この出来事は、高厚の政治的判断力と決断力を示す重要なエピソードと言えるでしょう。

1869年、版籍奉還により豊岡藩知事となります。明治政府のもとで、藩政改革に手腕を発揮しました。特に、藩校である稽古堂を女学校に改め、藩士の娘たちの教育に力を注いだことは特筆に値します。これは、近代国家への移行期において、女性の教育の重要性にいち早く着目した先見性を示しています。

1871年の廃藩置県により、知藩事を解任され東京に移りましたが、その後もその活躍は続きます。1884年には華族令により子爵に叙せられ、貴族院議員に選出され、1904年までその職務に当たりました。政治家としてのキャリアは、幕末から明治にかけての日本の激動期を反映しており、その時代の流れを巧みに乗りこなしながら、重要な役割を果たしたことがわかります。

高厚は政治家としての功績だけでなく、俳人としても知られていました。その作品は残念ながら多くは残されていませんが、豊かな教養と感性を持ち合わせていたことを伺わせる逸話が残っています。

1905年、77歳で東京にて生涯を閉じました。豊岡藩最後の藩主として、時代の変遷の中を生き抜き、政治、教育、そして文化と、様々な分野で貢献した京極高厚。その生涯は、幕末から明治という激動の時代を象徴する、興味深い物語として語り継がれるべきでしょう。

系譜

父：京極高行
母：古山氏
妻：艶（島津忠徹の娘）、登喜（勝田良彊の養女、小林文次郎長女）
子女：2男2女

参考文献

『貴族院要覧（丙）』昭和21年12月増訂、貴族院事務局、1947年
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』1990年
* 千田稔『華族総覧』講談社〈講談社現代新書〉、2009年

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