京王9000系電車

京王9000系電車は、京王電鉄が2000年（平成12年）から2009年（平成21年）にかけて製造した通勤形電車です。6000系の置き換えを目的として、メンテナンスコストやランニングコストの低減、環境負荷の軽減、バリアフリー化といった要素を取り入れて設計されました。その優れたデザインは評価され、2001年（平成13年）にはグッドデザイン賞を受賞しています。

概要

9000系は、6000系の後継車両として、将来的な都営新宿線への乗り入れも視野に入れて開発されました。ステンレス車体を採用し、ビードのない滑らかな外観が特徴です。京王電鉄が社名を変更後、初めて登場した新規系列でもあります。

製造当初は、8両編成が先に廃車となる6000系に対応するため、6000系・7000系との併結運転が可能な機能を搭載しました。しかし、当時はVVVFインバータ制御車が新宿線のATCに影響を与える懸念があったため、8両編成には新宿線乗り入れ対応の装備は見送られました。

2005年（平成17年）に新宿線のATCが更新され、VVVFインバータ制御車の乗り入れが可能になったことから、同年以降は新宿線乗り入れに対応した10両編成が製造され、6000系の新宿線乗り入れ編成を置き換えました。10両編成では、2002年12月に改正された地下鉄の火災対策基準に対応した設計変更が施され、8両編成とは内外装の細部に差異が見られます。

外観

7000系・8000系と同様に、ステンレス車体、20m両開き4扉、扉間に窓2枚という基本レイアウトを踏襲しています。ビードのない車体は、日本車輌製造の「日車ブロック工法」によるもので、車体強度の向上と軽量化に貢献しています。戸袋窓は廃止され、側窓は8000系と同様のサッシュレス1枚下降窓ですが、軽量化のため一部固定窓となっています。

新宿線乗り入れ対応のため、前面は貫通構造となり、中央に幅610mmの開き戸が設けられました。デザインは初代5000系のイメージを踏襲し、傾斜した側面まで回り込む曲面ガラスを採用しています。前面は一見平面に見えますが、実際には曲面で構成されています。製造の容易化を図るため、乗務員扉までの前頭部はアイボリー塗装の普通鋼製とし、スカートも同色で塗装されています。車体には、京王レッドと京王ブルーの帯が配されていますが、8000系とは異なるデザインとなっています。8両編成では編成間の貫通を考慮して幌を取り付ける台座が設けられていますが、10両編成にはありません。

内装

座席配置は、車端部4人掛け、扉間7人掛けという京王線の標準的な配置ですが、1人当たりの座席幅は8000系よりも10mm拡大され450mmとなりました。座席は片持ち式のバケットシートで、色は8000系よりもやや濃いローズピンクです。7人掛けの座席には、3人と4人に区切るための握り棒が設けられています。出入口脇には袖仕切りが設けられ、立客の背もたれとしての機能と座席の保護機能を兼ね備えています。壁と天井は白色系で統一され、明るく清潔な印象を与えます。床は茶系のツートンカラーで、中央部が薄く、座席付近が濃くなっています。天井は冷房ダクトと横流ファンを埋め込んだ平天井で、8000系よりも25mm高い2,270mmとなっています。

バリアフリー対策として、車椅子スペースが設けられたほか、つり革・荷物棚・座席の高さを低くするなど、利用者に優しい設計となっています。京王の車両として初めてドアチャイムと旅客案内装置が導入され、2006年までに製造された10両編成にはLED式、2007年以降に製造された10両編成にはLCD式の車内案内表示器が設置されています。

乗務員室

運転席からの視認性を向上させるため、京王の車両として初めて高運転台構造が採用されました。乗務員室はグレー系で塗装され、速度計は機械式が採用されています。ワンハンドルマスコンは従来車と同様ですが、ハンドル本体は8000系よりも大型化されています。乗務員を支援するため、モニタ装置が設置されています。8両編成の京王八王子寄り先頭車には、2両編成を連結して貫通できるよう可動式の仕切りが設置されています。10両編成には新宿線用ATCが設置され、後に全車に京王ATCが設置されました。

主要機器

主制御装置には、IGBT素子を用いたVVVFインバータ制御が採用されています。主電動機は、出力170kWのかご形三相誘導電動機です。駆動装置はWN駆動方式で、歯車比は85:14です。制動装置は電気指令式で、回生ブレーキを優先する制御が採用されています。台車は、軸梁式軸箱支持ボルスタレス空気ばね台車が採用されています。補助電源装置はSIV、空気圧縮機はスクリュー式、冷房装置は屋上集中式です。

バリエーション

8両編成と10両編成があり、10両編成は新宿線乗り入れに対応しています。また、製造時期によって、冷房装置の能力や内装などに差異があります。

改造

製造後、行先表示装置のフルカラーLED化、ATC設置工事、自動放送装置設置、台車交換、前部標識灯LED化などの改造が実施されています。

運用

都営新宿線乗り入れ運用を除き、京王線全線で幅広く運用されています。8両編成は7000系との併結、2両編成を連結した10両編成としての運用も可能です。

ラッピング

過去には、競馬場線開業60周年記念、日本ダービー開催記念、サンリオキャラクターフルラッピングなどの特別編成が運行されました。

2020年には、一部編成の台車に亀裂が発見され、全車両の点検が行われました。

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