WN駆動方式

WN駆動方式について

概要

WN駆動方式（WN Drive）は、高速運転を実現するために設計された電車用の駆動システムであり、アメリカのウェスティングハウス・エレクトリック社とその子会社であるナタル社により1925年から共同開発されました。WNの名称は、これらの企業の頭文字に由来しています。また、この記事でのWN駆動は、基本的に「平行軸カルダン駆動」に分類され、実際の構造や設計によってその特性が発揮されます。

この駆動方式の大きな特徴は、主電動機が車軸に対し平行に固定され、WN継手という特別な連結システムを介して電動機の出力軸と駆動歯車が接続されることです。WN継手は、二組のスライドスプラインから成り、その結果として主電動機が優れた弾性支持を受けることができるため、全体的な運転性能の向上に寄与しています。

歴史

WN駆動方式は、従来の吊り掛け駆動方式に代わるものとして開発されました。吊り掛け駆動は構造が単純である一方で、主電動機の重量が大きく、システム全体のバランスが崩れる問題がありました。そのため、軌道への負担が大きく、乗り心地の悪化や運転中の衝撃が主電動機に直に伝わるといった問題が発生していました。

1920年代には、スイスでブフリ式駆動方式、アメリカや欧州でクイル式駆動方式といった新たな駆動方式が登場しましたが、これらはいずれも大型であったため、電車用には広まらず、WN駆動方式がその後の技術革新により電車に適した選択肢として浮上しました。1941年にはシカゴの鉄道において、そして1948年にはニューヨーク市地下鉄での導入を経て、WN駆動方式は米国やアジアの広範な地域で普及していきました。

採用事例

日本

日本では、1953年に京阪電気鉄道の1800型においてWN継手が初めて実用化され、以降、多くの地下鉄や私鉄、および新幹線でも採用されてきました。特に、標準軌を採用している路線でのWNドライブの導入は早く、信頼性と大出力の特徴から広く普及しました。狭軌路線においても、主電動機の小型化が進められ、1956年には初の狭軌用WN継手が実用化されました。

推進力が求められる現代の電車では、WV継手が標準的に採用されており、特にJR西日本の新型電車群においては、その利点が活かされています。また、日本貨物鉄道においては、コンテナ貨物電車にもWNドライブが搭載され、効率的な運行が行われています。

海外

国際的には、WN駆動方式は北米やアジアの鉄道において主流の駆動方式となり、特にクイル式駆動方式と共に広く利用されています。しかし、ヨーロッパ地域では主にクイル式駆動方式が主流であり、WN駆動は増加傾向にあります。

問題点

WN駆動方式にはいくつかの課題も存在します。その一つが惰性走行時の騒音です。これは、継手に力がかからず、内部の歯車の公差によって発生するもので、運転中の快適性に影響を及ぼす可能性があります。特に、モーター回転数の変化がこの騒音に関わっており、現代ではその解決に向けて低バックラッシュ設計や騒音軽減策が進められています。今後も引き続き、高速運転のための最適な駆動方式として改良と進化が望まれるでしょう。

もう一度検索