人形美術協会

一般財団法人人形美術協会

一般財団法人人形美術協会は、東京都渋谷区に本部を置く、人形に関する研究、国際交流などを実施している法人です。元文部科学省文化部芸術文化課が所管していました。

目的

人形美術協会は、人形芸術の普及と向上を図るとともに、人形に関する研究、調査、国際交流を行い、日本の文化の発展に寄与することを目的としています。この目的は、協会機関紙「緋楽」にも明記されています。

概要

人形美術協会は、文部大臣の認可を受けた公益法人として発足し、文化庁の管轄のもと、東京本部と大阪本部を中心に活動しています。全国に約10,000名の正会員と150以上の支部を持ち、付属の東京人形学院の卒業生を含めると、130万名以上の人形愛好家を擁する、日本有数の「人形芸術振興分野の公益法人」です。

半世紀以上にわたり、日本の人形の普及と向上を目指し、数々の事業を展開してきました。

設立: 1969年（昭和44年）11月
会長: 佐々木ベジ
理事長: 中里敏夫
本部所在地: 東京都渋谷区代々木1-57-3

事業内容

人形美術協会は、以下のような多岐にわたる事業を展開しています。

人形美術展、研究会、講習会等の開催
人形芸術に関する調査、研究、図書文献の収集・整備
人形愛好者の育成・指導のための教室設置と教材提供
人形の創作活動を通じた青少年情操教育
日本人形を通じた海外との交流および留学生の招聘
古典人形の収集、保存、展示公開
人形美術に関する図書出版、機関誌等の発行（協会機関紙「緋楽」より抜粋転載）

所蔵品：観方コレクション

人形美術協会は、日本有数の古人形コレクションとして知られる「観方コレクション」を所蔵しています。これは、日本画家であり風俗研究家、そして人形美術協会の特別顧問であった吉川観方が、生涯をかけて収集した人形の集大成です。

観方コレクションは、宮家や公家、武家などに伝わった古典人形から、庶民の生活に根ざした素朴な郷土人形まで、種類、質、量ともに日本有数を誇ります。人形・文化関係者の間では広く知られています。

観方コレクションは、儀礼用、愛玩用、装飾用、鑑賞用、美術工芸品など、多岐にわたる人形を包含しており、平安時代から江戸時代に至る日本の人形の歴史と、当時の人々の生活様式を垣間見ることができます。コレクションには、伝来や製作年代、作者などが明らかな人形も多く、人形美術協会はこれらの貴重な文化遺産の保存と研究に力を入れています。

観方コレクションは、以下の9つのカテゴリーに分類・収集されています。

1. 古代人形（ひとがた）
2. 御所人形
3. 加茂人形
4. 奈良人形
5. 嵯峨人形
6. 衣装人形
7. 美女人形と役者人形
8. 機巧（からくり）人形
9. 土人形

あゆみ

人形美術協会は、半世紀以上にわたり、日本の人形文化の振興に貢献してきました。以下に、その主な歩みを記します。

1954年（昭和29年）6月：東京・渋谷区松涛町に東京人形学院設立。
1962年（昭和37年）6月：全日本人形師範会設立。日本の人形師範の大同団結促進。
1963年（昭和38年）10月：北白川祥子、全日本人形師範会名誉会長に就任。機関誌「緋楽」創刊。
1964年（昭和39年）11月：世界各国から参加のパラリンピック選手に人形100体贈呈。
1965年（昭和40年）8月：北白川祥子、全日本人形師範会総裁に就任。
1965年（昭和40年）10月：東京・日本橋三越本店で第1回人形美術展開催。
1967年（昭和42年）6月：吉川観方を主宰に故実研究会発足。
1968年（昭和43年）4月：フランスから人形視察団来会。
1969年（昭和44年）11月：財団法人・人形美術協会正式発足。人形界初、唯一の文化事業団体として、文部省から公益法人として正式認可。全日本人形師範会の事業を全面的に吸収し、財団法人として本格活動開始。
1971年（昭和46年）～1985年（昭和60年）: 海外からの要人との交流、人形指導者の海外派遣、エリザベス女王やフォード大統領夫人への人形贈呈など、国際交流を積極的に推進。

国際交流逸話

人形美術協会は、人形を通じた国際交流にも力を入れており、様々なエピソードがあります。

英国エリザベス女王からの礼状: 1975年、エリザベス女王に衣装人形を贈呈した際、「日本の工芸技術によるすばらしい作品」と丁重な礼状が届きました。
フォード大統領夫人への親善使節: 同年、三木首相夫人がフォード大統領夫人に人形美術協会制作の衣装人形「千代田城」を贈呈。ベティ夫人は大変感激したと伝えられています。
チャップリンの最後をみとった市松人形: 晩年のチャップリンは、伴淳三郎から贈られた人形美術協会の市松人形を愛でていました。その人形は、チャップリンの最期を看取ったとされています。

催事

人形美術協会の重要な催事の一つに、毎年正月中旬に国立劇場で開催される新年祝賀会があります。この祝賀会には、役員、本部教授、全国支部の師範、門下生が一堂に会し、文部大臣をはじめとする文化人、政治家、財界関係者も参加して、年頭の祝賀を行います。前年に人形芸術の普及・振興活動に貢献のあった人々が表彰されます。

教授会・師範会のメンバーには、文化勲章・文化功労賞の受賞者も多く輩出しています。

外部リンク

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