人文社会科学研究科

人文社会科学 研究科（じんぶんしゃかいかがくけんきゅうか）

人文社会科学研究科は、日本の大学院に設置される研究科の一種であり、人文科学と社会科学という二つの広範な学問分野を統合し、それらの境界領域や横断的なテーマについて高度な教育および研究を行うための機関です。英語では一般的に "The Graduate School of Humanities and Social Sciences" と表記されます。複雑化し多様化する現代社会の諸問題に対し、既存の学問分野の枠にとらわれない包括的かつ多角的な視点から深く探求することを目的としています。この研究科は、学術的な探究を通じて、高度な専門知識と幅広い視野を兼ね備えた人材の育成を目指しています。

研究領域

人文社会科学研究科が対象とする研究領域は非常に多岐にわたります。伝統的な人文科学の分野、例えば文学、哲学、歴史学、言語学、芸術学など、そして社会科学の分野、例えば社会学、心理学、教育学、地理学、文化人類学などが含まれます。さらに、研究科によっては、法学、政治学、経済学、経営学、国際関係学といった分野を研究対象に含める場合も見られます。

このように幅広い分野を包含するため、既存の大学院研究科、具体的には文学研究科や人文科学研究科、人間科学研究科（人文科学系）、あるいは社会学研究科や心理学研究科（社会科学系）といった名称の研究科が扱う研究分野とも重複する部分が多くあります。しかし、人文社会科学研究科の特徴は、これらの分野を単独で深掘りするだけでなく、分野間の関連性に着目したり、複数の分野の視点を組み合わせて研究を進める学際的なアプローチを重視する点にあります。これにより、例えば文化現象を社会構造や心理学的側面から分析したり、経済問題を歴史的背景や文化的な影響と関連づけて考察するなど、より包括的で現実社会に即した研究が可能となります。

教育課程と学位

主に人文社会科学部など関連学部の教育課程に接続する形で設置され、教育課程は、基礎的な研究能力や高度な専門知識の習得を目指す博士前期課程（修士課程）と、自立した研究者として新たな知見を生み出す能力や高度な職業専門能力の育成を目指す博士後期課程（博士課程）から構成されるのが一般的です。これらの課程を通じて、学生は特定の研究テーマについて深く掘り下げるとともに、関連する他の分野の知識も幅広く修得することが求められます。

取得できる学位の名称は、その研究領域の多様性から、必ずしも「修士（人文社会科学）」や「博士（人文社会科学）」といった研究科名を冠したものになるとは限りません。学際的な研究分野を修めたことを示す学位として、「修士（学術）」や「博士（学術）」が授与されるケースが多く見られます。これは、特定の狭い専門分野に限定されない、幅広い学術領域における知識や研究能力を修得したことを公的に証明するものです。また、学生が専攻した具体的な研究分野・領域や、それが相当する学問分野の名称を付記した学位が授与される場合もあります。

設置状況と関連研究科

人文社会科学研究科は、全国の様々な大学に設置されています。例としては、弘前大学、筑波大学、千葉大学、埼玉大学などが挙げられます。

また、名称は異なるものの、人文科学と社会科学の領域を横断する教育・研究を行っている類似の研究科も存在します。例えば、東京大学の人文社会系研究科、広島大学の人間社会科学研究科、岡山大学や熊本大学の社会文化科学研究科などがこれに該当します。さらに、単独の研究科としてではなく、他の研究科の内部に人文社会科学に関連する専攻が設けられている場合もあります。高知大学の総合人間自然科学研究科における人文社会科学専攻などがその例です。これらの研究科や専攻もまた、学際的な視点から人文・社会科学領域の研究を推進する重要な役割を担っています。

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