人間 (長渕剛の曲)

長渕剛のシングル「人間」：内省と希望、そして音楽的挑戦

1994年8月10日、長渕剛の27枚目のシングル「人間」がリリースされました。この曲は、オリコンチャートで最高4位という好成績を収めながらも、オリジナルアルバムには収録されず、多くのファンを驚かせました。しかし、その後のベストアルバムへの収録や、稀ながらもライブでの演奏などから、長渕剛の音楽史における重要な一曲であることは間違いありません。

深みのある歌詞とサウンド

「人間」の歌詞は、長渕剛自身の内面を深く見つめ直し、人間として前向きに生きていく強い意思を表現しています。特に目を引くのは、相田みつをの名作「人間だもの」からの引用でしょう。前作「RUN」における相田みつを作品への盗作疑惑、そしてその後の遺族との和解を経て、ようやく実現したこの引用は、楽曲に独特の重みとメッセージ性を与えています。ジャケット裏には「A tribute to Mr.MITSUO AIDA」との表記があり、敬意の念が感じられます。

サウンド面では、アコースティックギターを基調とした、沖縄音楽を思わせるエキゾチックなアレンジが特徴です。音楽情報サイト『CDジャーナル』は、「ミディアム・スローのラブ・バラード。ペンタトニック・スケールなどを用いたエスニックなサウンドや緩やかなハンド・クラップなどが特徴的」と評しています。このサウンドは、歌詞の持つ内省的な雰囲気と見事に調和し、リスナーに深い感動を与えます。

制作背景とリリース

実は「人間」は、1993年発売のアルバム『Captain of the Ship』のために制作された楽曲でした。しかし、様々な事情によりお蔵入りとなり、1994年発売のライブビデオ『白の情景』に収録されるにとどまりました。それから約1年後、シングルとして世に出ることになります。

シングルリリースは1994年8月10日、東芝EMIのエキスプレスレーベルからでした。前作「RUN」から約1年ぶりのシングルとなりますが、本作はタイアップがなく、純粋に楽曲の力だけで勝負したと言えるでしょう。オリコンチャートで最高4位という結果を残したことは、その実力を証明しています。しかし、この結果により、「しゃぼん玉」以降続いていたシングル連続1位は3作品で途絶えることとなります。

その後、オリジナルアルバムへの収録はされませんでしたが、ベストアルバム『いつかの少年』（1994年）に収録され、より多くのリスナーに届けられることになります。カップリング曲「I love you (Acoustic version)」は、アルバム『JAPAN』（1991年）に収録されていた「I love you」のアコースティックアレンジバージョンで、こちらも聴き応えのある楽曲です。

批評とチャート成績、ミュージックビデオ

『CDジャーナル』は「“俺たちは人間だもの”というシンプルかつ根本的な視点から愛を歌う」と評し、楽曲の普遍的なテーマとメッセージ性を高く評価しています。オリコンチャートでは最高4位、登場回数10回、売上枚数35.7万枚という記録を残しました。

ミュージックビデオは京都の愛宕念仏寺で撮影され、長渕剛と僧侶の西村公朝が語り合うシーンが印象的です。このMVは、楽曲の世界観をより深く理解する上で重要な要素となっています。

ライブパフォーマンスと収録アルバム

「人間」は、ライブでの演奏頻度は高くありません。1994年のツアー「Live'94 Captain of the Ship」、1995年のツアー「Live 95 JUST LIKE A BOY -Acoustic Road-」、そして2009年のツアー「Tsuyoshi Nagabuchi Acoustic Live 30th Anniversary」でのみ演奏されたとされています。これは、楽曲の持つ繊細さと、ライブパフォーマンスとの兼ね合いが、この選曲に繋がっているのかもしれません。

「人間」は、スタジオ音源として『いつかの少年』（1994年）、『SINGLES Vol.3 (1988〜1996)』（1997年）に収録され、ライブ音源は『LIVE COMPLETE '95〜96』（1996年）、ライブ映像は『LIVE “いつかの少年”』（1996年）に収録されています。これらの作品を通じて、「人間」はこれからも聴き継がれていくことでしょう。

もう一度検索